第1章 招かれざる客
歩き続けること十五分。
現在進行形で迷惑反射器で或る彼はセキュリティの厳重そうな高級マンションで足を止めた。
「真逆飛び降り自殺に向いているマンションだ、とか云い出しませんよね?」
「………敦君、君には私が任務を放棄して自殺をするような人に見えるかい?」
「えぇ。見えます。そして此れは任務ではありません。」
ブンブンと音が鳴りそう。…否、鳴る程深く頷く敦から斬り捨てられがっくしと肩を落とす太宰。
彼は此れ程まで落ち込む姿を見たのは国木田から包帯無駄遣い装置と云われた時以来だろうか。
見兼ねた敦は拙い、とすかさずフォローを入れる。
「…あ、あのー。太宰さん?これから如何するんですか?頭の回転が速い太宰さんなら全て計画しているんでしょう?」
「もちろんさ!!まぁ待ち給え。」
云うや否や電話を取り出し何処かに掛けているのを見て自分は遊ばれていたのだと気付く。
こんな事なら無駄な気遣いをするのでは無かったと思っていると、どうやら電話の相手が出たようだ。
「もしもしー?今ね、家の前に居るんだけど開けて欲しいなー。流石にこのマンションに忍び込むのは骨が折れそうだ。……………それは勿論逢いたかったから来たのだよ!愛の力は無限大さっ!……………うんうん。分かったよ。じゃあ後でね。」
電話をする太宰の後ろをついて行き中まで入ると矢張り見た目通り豪華な建物だった。
自動施錠の扉がカチッと鳴ったと同時に太宰も電話を切る。
「此処が愛理さんの家だとか云いませんよね?」
「え?そうだけど?それより鍵閉まっちゃうから早く行くよ。」
「あ!待って下さいよ!こんな所に住んでるなんて御令嬢だったりするんですかね?」
「…………………真逆、ね。」
ボソッと呟いた最後の言葉は後ろから慌ててついてくる敦には到底聞こえもしなかった。