第8章 四月莫迦を君と 其の三
「其れにしてもよく愛理さん分かりましたね。」
いいぞ!敦!もっと聞け!
『私も横に居たから。ほら、依頼主が見つけて欲しいって云う人物をみんなが探していた時太宰さん居なかったでしょう?あの時合流したの。依頼主自身が其の人を監禁してたっていうのには吃驚したけどね。』
「分かってたなら僕達探さなくても良かったんじゃ…」
『探しているという事実を依頼主に分からせるのも必要だよ。』
「はぁ……」
太宰め、そんな事を企んでおったのか!
通りで捜索中に宮野と連絡が取れなかった筈だ。
あの時は誤魔化しおって…。
って俺はまた何故宮野の事を考えているんだ。
集中せねば、予定が崩れてしまう。
あれから如何しても愛理の事を考えてしまっていた国木田は何とか予定通りに仕事を終わらせたものの、疲れは倍増しその日は倒れるように布団に潜り込んだ。
-次の日。
『国木田さん!お早う御座います!』
「嗚呼、お早う。」
俺を始めとする皆に挨拶を終えると彼女は自分の席へ行き仕事を始めるべく腰を掛けた。
ん?待てよ?
今日は何時もより静かだ。
日頃好きだ好きだ、と朝から五月蝿いが今日は違う。
皆と同じ様に普通に挨拶をしただけだ。
何だ、もう飽きてしまったのか…。
「君ってさー、意外と可愛いところあるよね。」
『へっ!?かっ、可愛いって…。いや、其の前に意外って何ですか!』
「えー?其のままの意味だけど?今日一日は大人しくしておく心算?」
『ゔっ、流石名探偵。その心算ですけど…』
「ふーん。じゃあ駅前の喫茶店で新発売のぱふぇでも食べに行こうか。」
『何故そうなるんですか!って私仕事が…』
「国木田ー。良いでしょ?」
「……はい。」
乱歩さんからの頷かざるを得ない提案に渋々首を縦に振る。
宮野はというと褒められた事が嬉しかったのか未だ顔を赤くして乱歩さんを見ていた。
何だ此の胸が苦しい感じは。
矢張り疲れが溜まっているのだろうな。
俺はちらと二人が出て行ったのを確認するととりあえず目の前の仕事に集中する事にした。