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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第8章 四月莫迦を君と 其の三




ー三月三十日。


『くーにきーださーん!お早う御座います!好きです!』

「お早う御座います。」

「嗚呼、敦か。お早う。」

『えっ、私の事無視ですか!?扱い雑過ぎません!?』

「貴様にいちいち構っていたら予定が狂ってしまう。ただでさえ狂わせる奴がおると云うのに…」

『相変わらずツれないですね、国木田さん。でもそんな所も好きですよ?』

「だったら其の好きな奴を困らせない為にさっさと仕事しろ!」

「はぁーい。」


此れ、即ち宮野愛理が朝晩問わず俺に好きだと云ってのけるのは毎日のことだ。
仕事人間の俺を揶揄うのがさぞかし楽しいのだろう。
最初は懐いた子犬みたいで可愛げが或ったが、今では太宰と同様面倒な奴だと認定されている。
いや、素直に云う事を聞く分まだ宮野の方がマシかも知れん。


「国木田さん、この書類なンですケド…」

「嗚呼、此れは下の処にサインをして相手にFAXを送っておけば大丈夫だ。」

「分かりました!ありがとう御座います。」

『良いなー、谷崎君。国木田さんと話せて。』

「愛理さんも聞いて来たら良いじゃないですか。」

『だって分からない処無いんだもん…』

「其れは其れで凄いと思いますケド。」


宮野は好きだ、と訴え掛ける割に纏わり付いたりしつこくしたりはしない。
彼奴の性格からするとして来ても良さそうだが恐らく挨拶代わりみたいなものだろう。
何処かの誰かが美人で或れば口説くのと同じだ。


って俺は何を考えているんだ!
いかんいかん、仕事に集中せねば。


「誰か太宰さん知りませんか?」

「どうせ川に飛び込んでいるのだろう。探すだけ時間の無駄だ。」

「其れが此処、太宰さんじゃないと書けない場所なんですよ…。」

「あの唐変木め!!どれだけ迷惑を掛ければ気が済むのだ!!」

『んー、何処何処?……あ、此処はね、依頼主に盗聴器を仕掛け跡を付けたが故に発覚。で良いよ!』

「有難う御座います!太宰さんしか経緯知らないもので助かりました。」

『いいえー。』


ん?何故太宰しか知り得ん事を彼奴が知っている?


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