第2章 貴方が一番 前編※
と、その時。
「おい、何してる」
低い声が響いた。
「…へ…いちょ……」
「……リヴァイ兵長」
顔を上げると、明らかに不機嫌そうな顔をした兵長が立っていた。
「……エレン、こっちに来い。」
早くその汚ねぇ奴から離れろと言わんばかりに、ジャンを冷たく睨みながら言った。
「へ、いちょう……っ」
まだ力の入らない足を動かし、兵長の元へ向かおうとした。
が、後ろから抱きつかれ、身動きがとれなくなる。
「お、い……っ、離せ、ジャン…っ」
「…エレン……俺のものには、なれないんだな……」
どこか寂しそうな呟きに、思わず振り向く。
「な……なに言って…んん…っ!?」
振り向いた瞬間、強引に唇が重ねられた。
目の前に、兵長がいるのに。
あぁ……嫌われちゃったかな……、なんて、呑気に考える。
……もし兵長が俺を嫌っても、俺は貴方のことを想い続けますから――。
ひゅんと、風を切る音がして、疾風の
ように、何かが俺の視界を横切った。