第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「地方の大学に進学が決まったんだってよ」
俺がさんの説明に付け加える。
「また今度誘って!あ!ここサインして、すぐ提出するから」
「オッケー!」
俺はさっとサインをして、そのままさんに書類を手渡した。
「ふふ、じゃあまたね~」
ニッコリと笑って、さんは経理部に帰って行った。
「あっさりしてるんですね」
「まぁなーま、そこがまた、いいんだけどよー」
「……貴方の口からノロケを聞く日が来るとは思いませんでしたよ」
「そぉ?バニーちゃんのも聞くよ。って、そう言えばお前はいないの?彼女」
「えぇ。今は……」
「ふーーーん……」
今は、、、ね。
あんま気にしてなかったんだよな。正直。
色々と。
だけどこの後もさんとは、会社で顔を会わすけど、夜一緒に食事や飲みに行くなんてのが、お互いのタイミングが合わずに、全く出来ないでいた。
付き合ってすぐなのに、全く時間の取れない俺はその寂しさを紛らわすために、さんとの話を色々バニーにしてたんだ。
バニーのヤツもよ、珍しく喰い気味で話を聞いてくれっからさ~
俺はやっぱ、浮かれて話したんだ。
余計なことまで。
やっと三人で時間が取れたから、バニーがご馳走したいなんって言って高級なレストランを予約してくれた。
さんは、そんな高級な店は肩が凝るから嫌だ!なんって、言ってたんだけどよ
ま、バニーはあんま大衆向けの店には行けなくってさ、個室のある店によく行くんだ。
だから、あんま気を使わないでいいって話したら
「そお?じゃあ、いっぱい美味しいの食べよ~っと」
なんて、途端に元気になってるさんが、
俺にはやっぱり可愛かった。