第21章 背徳のシナリオ ~前編~
まぁさんも、二人の事あまり言うなって言ってたし、自然に判ればいいか、なんて軽い気持ちで俺も特に誰にも言わないつもりだった。
もちろんバニーにもだ。
だけどバニーのヤツは、ほんっと周りをよく見てっからさー
「虎徹さん、昨日いい事ありました?今日は、凄く楽しそうですね」
って……
「あーやっぱ、わかっちゃう?」
「はい、貴方それで隠してるつもりですか?」
「いやー実はさ~俺とさん……付き合うことになっちゃってさ~」
「……昨日、僕がいない間に?」
「おう、二人で焼肉行くつもりが、なんでか牛も一緒になっちまってよー」
「……それがお二人の進展に、関係あるんですか?」
「いやっ、特にねぇんだけどよっ!へへっ」
俺は照れ臭さを隠して、笑った。
「あんな失礼な事を言っていたのに?」
「まぁ、いいじゃねーか!なっ!」
「さんは、本当に心の広い女性ですね」
「まぁなー」
なんて話をしてたらさんが、俺達のオフィスにひょっこり顔を出した。
「鏑木さ~ん……これ、サイン抜けてるよ~」
ピラピラと賠償金の紙を振っている。
「わっ!それピラピラさせんの、止めてっ!!!」
「何枚もあるから、抜けてしまうんですよ」
バニーが席を立って、さんに近付き
「今、貴女の話をしていたんですよ、おめでとうございます」
なんてニッコリ笑いかけている。
「えーもう言ったの?」
「いえ、僕が気付いたんですよ。虎徹さんが、あまりにも浮かれていましたから」
「浮かれなくてもいいのにねー」
なんって、ケラケラと笑っているさんにバニーが
「よかったら今夜にでも、二人の馴れ初めを聞かせてほしいな」
おぉ!流石バニーっ!女性の誘い方がスマートだ!
俺は感心してその様子を見ていた。
だけど、さんは
「今夜は無理だなーごめんねっ!息子が帰ってくるの早いの。あと少しで出て行っちゃうから、出来るだけ一緒にいたくって」
断ってた。