第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「あ、シャワー使う?」
「いや、もうこのまま会社に行くよ。向こうのロッカーに着替えも置いてあるし、会社のシャワールーム使うわ」
「そう。じゃあ先に会社……行く?」
「いや、一緒に行こう」
「いいの?」
「当たり前っ!皆にさんは俺の彼女だって知らしめないと」
「……いや、それはいいわ。面倒そう」
「だっ!なんでっ!?」
「虎徹君は知らないだろうけど……」
あ、良かった。さっき、鏑木さんなんって呼ばれたからドキッとしたけど、また名前で呼んでくれたな……
なんて、ホクホクした気分でさんの話を聞いていたら
「社内のワイルドタイガーファンに殺される」
なんて真剣な顔で言ってきた。
「は?」
「虎徹君は、知らないだけだよっ!めっちゃ人気あるのっ!」
「それはバニーだろ?」
「いやいや、確かにBBJの人気は凄いけど……ワイルドタイガーファンも多いんだって!」
「へぇ~俺もなかなか……って!!!また、俺から逃げようとしてんのっ!?」
「いやーやっぱ、おばちゃんじゃ気を使っちゃうよー」
「あのねー次、言ったら……」
「次、言ったら?」
「チューする。いつでも、何処でも」
「じゃあ、今、ここで言おう!」
「あー、ここでは言わなくてもチューする」
「やった」
なんて明るく笑うさんにキスをする。
そうだ、俺はこの笑顔に惚れたんだ。
いつまでも俺の傍で、笑っていてほしい。
俺はコーヒーが冷めるのも気にせず、さんの顔中にキスをしまくった。
愛らしい目尻のシワには、特に念入りに。