第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「ね、ねぇ……」
さんがそっと俺の胸を押す。
「ん?」
また何か照れてフザケてくるのかと思ったら
「ここじゃ、やだ……」
「!!!」
俺は思わずさんを、お姫様抱っこした!
ビックリしたさんが、俺の首に抱き付いてきたのに、
「ギャー私、重いよっ!やだっ!降ろしてっっ!」
「あのね~……俺を誰だと思ってんの?」
「鏑木……虎徹君……あっ!そっか、ハンドレットパワー使ってる!?」
「そんな能力出さなくても、さんぐらい、抱き抱えれるわっ!!!」
「あ、そっか身体鍛えてるもんね」
そう言って俺の首を撫でてきた!
「いや、そこはそんなに鍛えてないから……くすぐった……」
なんて言ってたら、真っ赤な顔を俺の胸に預けてきて……
「寝室……そこ……」
あーーー!また、照れてフザケてたんだなぁー
さんっ!!!
俺達は寝室に入り、そしてさんをベッドの上に降ろすと
「さ、先にシャワーでも……あ、着替えっ!息子の買い置きの下着なら……」
なんて捲し立ててきた。
「緊張してる?」
俺はさんの頬を撫でた。
「うんっ!!!」
元気な返事が返ってきて……思わず笑ってしまいそうになったけど……
「俺もしてる……」
「嘘だ……」
嘘?
「なんでそんなこと……」
「だって、モテるでしょ?いいよ、もうからかうのなしなし!」
そう言って起き上がろうとするさん。
「モテない!まぁ……バニーのヤツは、モテてるみたいだけど、俺は素顔を晒してないし、特にモテた記憶もない」
ってなんで俺、こんなカッコ悪いことカミングアウトしてんだ!?
「私……こんなの、元ダンナ以来なんだけど……」
「……俺も………………」
死んだ友恵以来だ……なんて、言葉は飲み込んだ。
目の前の元気で明るいさんに、触れられれば……
それで良かったから……