第21章 背徳のシナリオ ~前編~
「ちょっと……上がってく?」
「いいんっすか?」
「汚いよ?息子が私より後で出掛けてるから、きっと色々、転がってる」
「大丈夫、大丈夫っ!」
俺はそのまま、さんを家まで送って行った。
もちろん手は繋いだままだ。
さんが玄関のドアを開けると、
確かにそこには息子が脱ぎ散らかしたであろうパジャマなんかが、転がっていた。
「あーやっぱり……ごめんねー。ひいてない?」
「いや、あんま俺ん家と変わんなくって、安心したかも」
「ははっ!そう?上がって、コーヒーでいい?」
「いや、俺……」
「んー?」
さんが、その辺りに散乱したものを拾いながら聞いてくる。
「さんがいいから、何もいらないんだけどなー」
「はい、はい。いいよーそんなのは、コーヒーね」
「いや、ほんと」
俺はコーヒーを淹れようとキッチンに足を向けたさんを、後ろから抱き締めた。
さんの腹に回した腕が、なんかフカフカして気持ちいい。
後頭部に頭を擦りつけていると
「甘えてる?」
なんて聞かれちまった。
「いや……」
俺はさんの腰を抱いて、自分の方に向き合わせた。
「ち、近いな……」
照れるさんが、可愛くて仕方ない。
「俺、さんのこと、甘やかしたい……」
そう言って顔を近付けると、さんは目を大きく見開いたまま……
俺を受け入れた。
俺は軽くキスをして、すぐに唇を離した。
「普通、目、閉じないっすか?」
「い、いや、ビックリして……キスなんてするんだね……」
「え!?しないんっすか!?」
初めてなワケないよな、子供もいんだから……
「いや、久しぶりすぎて……ははは……」
あーそっか照れてんだなぁ、さん。
「もっと先のこともしちゃうけど、いい?」
そう言って、もう一度顔を近付けると
今度は目を閉じて
俺を受け入れてくれた。