第16章 if...
「お前……何しに来たんだ……」
アニエスは、ブレない。
何歳になろうが、どんな役職に就こうが、視聴率が一番の女だ。
「……クルーは連れて来ていないわ」
アニエスの声が震えていた。
「…………何があったんだよ」
確かに、アニエスといつも一緒にいる、カメラクルーのスタッフ達はいない。アニエス一人だ。
「取材中に……近くで遊んでいた子供が……車の前に飛び出して……」
「そんなのアイツの能力がありゃ、問題ねーだろ?」
「そうなんだけど……実はその前に……出動要請があったのよ……」
「はぁ?俺んとこには、連絡来なかったぞ?」
「バーナビーが……タイガーに連絡するな、って……」
「何でっ!!!」
思わず大きな声で叫んだ。
すると
「お父さんっ!!!」
楓の大きな声が聞こえた。
「ママっ!」
ジュニアが走って行った……
「お前……仕事は……」
「就業時間はとっくに過ぎてるわよ。アニエスさんから連絡貰って……急いできた……」
楓がジュニアを抱き締めている。
「ジュニア、少し向こうに行って、ジュースでも飲もう」
「うん、おとうさん、すぐかえってくるからね?だいじょうぶ?」
「あ、あぁ!当たり前だろ、少しおまえも休め。さっきまで暴れてたんだからな」
楓がジュニアを連れて俺達の前を離れた。
俺とアニエス……二人になった。