第16章 if...
ヒーロー御用達の病院へ搬送されたバニーは、すぐに手術室に運ばれた。
俺も一緒に入ろうとしたら、もちろん止められた。
ま、当たり前なんだけどよ。
でもあの時は、なんで俺がバニーの傍にいちゃいけねーんだって、暴れちまってよ……
そしたらさ、ジュニアが
「おとうさんっ!!!」
一言、大きな声で叫んで
俺にギュッと抱きついてきたんだ。
ハッ……
とした……
そこでやっと……俺は……我に返ったんだ。
「悪ぃ……ジュニア……ごめん、ごめんな……」
ジュニアは俺にしがみついたまま、首を横に振った。
俺はジュニアを抱き締め返すと、手術室の前の椅子に腰掛けた。
二人、じっと座っている。
何してんだろ、俺達……こんなとことで……
ホントならさ、今ごろ、シルバーにあるレストランで、3人で飯食ってる頃なのによ……
「ジュニア……お前、腹減ってないか?」
「だいじょうぶだよ……」
「そっか……悪ぃな……」
「ううん……」
ジュニアは聡い子だからさ、今はそんな時じゃないって気付いてたんだろうな。
でも、俺もここを離れる気がなかったからさ……
狡いんだけどよ、ジュニアの言葉に甘えさせてもらった。
しばらくすると、カツカツカツと走ってくるハイヒールの足音が聞こえた。
アニエスだった……