第4章 ちうパニック(食満留三郎)
「ねぇ椿さん、それ…」
喜三太が椿の首を指差して言う。
それに気づいた椿が手で隠しながら恥ずかしそうに笑う。
喜三太、頼むからそれに触れるな。
「痒そうだねぇ。僕もよく刺されるよ。」
おい………ん?
「そうなの。さっき薬貰ったんだけどね、ここ襟に当たって痒くてね。」
………………………
「わぁ、大変だねぇ。」
だから………は?………何だって?
「じゃあみんな、ちょっと借りてくね。留三郎行くよ。」
「お、おい!?」
「いってらっしゃーい!」
後輩たちに手を振られ、俺は椿に引っ張られて連行された。
校舎裏の人気のないところまで来ると、椿は少し怒ったような顔で俺に向き直る。
「留三郎、何か怒ってる?今朝から変だよ?」
それを椿に言われるのか?というか、言わなきゃいけないのか?
情けねぇ……
「お、お前の……その、だから……」
「私?私の何?」
椿がぐいっと詰め寄る。
責めるようなその目に、俺は覚悟を決めた。
「ねぇなんなのよ?」
「……あーもう!!だから、お前の首に付いたそれが、誰かに付けられたものだと気になってだなあ!!」
椿は驚いた顔をしたあと、急に笑い出す。
まぁ、当然そうなるわな。
「これ?これは虫に刺されたんだよ、寝てる間に。なんだ、これ気になってたの?」
「なんだとは、なんだ!?俺は…!」
「ふふ、心配してくれたんだ?」
図星をつかれ顔が熱くなる。
「あのね、実を言うと少し不安だったんだ。」
「?」
「留三郎ってさ、その…あまり言ってくれないから。なに考えてるのかなって思って。」