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【忍たま】短編集

第4章 ちうパニック(食満留三郎)


それは…まあ、そうかもな。
俺は小平太みたいに直球にものを言えないし、仙蔵みたいに褒めたりできない。
だってそんなの、口にするのはやはり…照れるだろ。


「でもちゃんと、私のこと見ててくれたんだね。」


椿が顔を赤らめて笑う。
その顔は反則だ。


「俺はあまりそういうこと言えないから…」

「うん。」


言葉に出して伝えるのは難しい。
椿はそれを望んでいるのに。
だから俺は、こいつの小さな体を腕の中に閉じ込める。


「こうする方が、お前に伝えやすい。」


胸の音がうるさい。
椿を前にすると、どうも体の制御が効かなくなる。

椿が俺の背に手を回す。
それだけで気持ちが通じ合う気がするから不思議だな。


「ふふ、留三郎好き。」

「……おう。」


俺はこいつに調子を狂わされてばっかりだ。




「でもね、何で虫に刺されたことで留三郎が怒るの?心配してくれたのはわかるけど。」


……は?何て言った?
こいつまさか、わかってないのか!?

椿から体を離してその顔を窺う。
キョトンとして今の言葉が空耳ではないことを証明している。


「椿、それが意味すること…わからないのか?」

「え?んー……うん。」


こいつ本当に十七か!?
あ、いや少し世間とはズレたところがあるから仕方ないのかもしれないが……俺にそれを聞くか!?
いや違う、他の奴に聞こうものなら、何されるかわかったもんじゃない!
だけど、言えるわけねぇだろ!


「そ、それは……追々教えてやる……」

「え、今はダメなの?」

「今!?だっ、ダメだ!いいか、他の奴にも聞くんじゃないぞ!?」

「んー、わかった。留三郎がそう言うなら、そうする。」


よし、その言葉を聞いて少し安心する。
まったく、なんて危なっかしいんだ。
俺が少しずつお前と一緒に前に進むから、それまで待ってろ。


「お前は俺についてくればいいんだよ。」


椿の頭を撫でる。
お前はそうやって、俺の腕の中で幸せそうに笑っていればいい。
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