第2章 彼女の正体。
しばらくしてノックの音が聞こえる。
『入れ…。』
まぁ『失礼します 。コーヒーです。』
学秀『ここに置いてくれ。』
カチャッ…。
コーヒーをローテーブルに置き、『では、失礼します。』と出て行こうとする彼女に、
学秀『待て。お前は僕の専属使用人だろ?なら、僕がいいと言うまではここにいろ。いいか?これは命令だ。まぁ。』
『ッ…!気安く下の名前で呼ばないで!』
学秀『口の聞き方には気をつけろ。二度目はない。』
『…………。』
学秀『ではまず、肩を揉んでもらうとしようか。』
そう言って彼女を見ると明らかに顔を歪めている。
が、観念したのか僕の後ろに立つと肩を揉みはじめる。
学秀『もっと力を入れろ。…そうだ。あとそれが終わったら手もマッサージしろ。いいな。』
黙って言う事を聞く彼女を見ながら、僕は左腕を彼女に差し出す。
手のひらに優しく触れ、親指でツボを押す彼女の手は僕よりも小さく、何よりやわらかい。
指を一本ずつ親指と中指で摘みながらツボを押す。
自然に指同士が絡み合う感覚に何故か僕は心地よさを感じていた。
学秀『どうだ?元令嬢が支配される気分は?』
グイッ。
マッサージされていた手を引っ張られ、僕は彼女と顔の距離が一気に近づく。
『いつかあなたを支配したげる!それまでの辛抱だから!私は負けない!』
その大きな桃色の瞳と僕の瞳が交差する。
……こいつを…支配したい………
気づいた時には唇を合わせている自分がいた。
『なっ…。何すんのよ!』
学秀『……。使用人は何をされても逆らえない事を教えてやっただけだ。』
『チッ……。』
悪態をつく彼女であったがその頬は赤く染まっていた。