第26章 Rush around
2度目のお願いにもぴくりともしない体
突き刺さり続ける視線に耐えかねて
腕を引っ張って無理矢理
店舗横の細い路地に引っ張り込んだ
「もう…きゅ、急になんなの?」
薄暗い街灯で照らされた表情は
翳りを纏ったままで
「ちゃんと、教えてくれる…?」
優しく促すとゆっくり、口を開いた
「俺、潤のファンで…
その…LINEのID教えてもらってすぐ、
エッチする関係になったんですけど…」
あいつ、ファンにまで手ぇ出してやがったのか…
苛立ちをなんとか表情には出さないようにして
雅紀の言葉に耳を傾け続ける
「ある日、ホテルで潤に告白…されたんです。
俺と付き合ってくれないか、って」
眉間に皺が寄った俺を見た雅紀が
慌てて続けた
「でも!その時…潤、泣いてたんです…っ」
…泣いてた……?
思いがけない言葉に
耳に届いていた
すぐ近くを歩く足音や
周囲の賑やかな声が遠くなっていく
「背中向けたままの言葉が震えてて。
慌てて向き合ったら、
顔を歪ませて、ぼろぼろ泣いてて…
苦しそうに泣く潤を抱きしめたら
話してくれたんです、
あなたへの想いのこと…」
前掛けの店名が潰れるほど
ぎゅう、っと握りしめながら
雅紀も苦しそうに続きを話してくれた