第26章 Rush around
ふわふわ…
ゆらゆら……
海に浮かぶような
心地よく揺れる感覚に
夢の中から意識が戻ってきて
鼻腔に抜けたよく知る香り…
潤の香水…?
重い瞼を少し開くと
ばっちり視線が絡んで
「飲みすぎ」
優しい声色と眼差し
あれ…?
怒ってねぇのかな…
「落ちたら危ないから、掴まって」
腕の中で言われた通りに
潤のシャツを掴む
いつもより近くで感じる体温に
嬉しさと、悲しさが混同する
潤は他の奴にも…
お姫様抱っこ、やるんだろうな…
優しくソファに降ろされると
勝手知ったる我が家のキッチンから
手早く持ってきた
カップの水を渡されて
一口、体に流し込む
その間も正面からの視線は柔らかで
「…怒ってんじゃ、ねぇの…?」
「…ん?」
「連絡、しても返事…なかった…」
隣に腰かけた大きな目が
一瞬見開いて首を傾げてる
「え、俺返してなかった…?」
「返ってきてねぇよ…」
取り出したスマホの画面がこちらに向いて
打ちかけの文章が目に入る
「悪い…不参加って送ったつもりで
送ってなかったわ」
「それ、グループの方だけど…
俺個人で送ったやつは…?」
話がしたい、の返事もないまま…
黙ったまま俺を見つめる潤に食ってかかる
「俺に返事すんのより、
あの男とデートしてる方がいいのかよ?
なら俺のことなんかほっといて、
早く戻ればいいだろ…っ」
こんなこと言いたいんじゃないのに。
気付いた感情が勝手に暴走していく