第26章 Rush around
「翔…ほら、もうすぐタクシー拾えるから」
体を支えられなくなった俺を
2人の手が優しく立たせてくれて
無駄に明るいネオンの光が
少し和らぐ
片方の温もりが離れて
「かずちゃんがタクシー止めようとしてるから、
もう少し我慢な?」
止まらない涙で顔を上げられなくて
こくん、と静かに頷く
今頃、潤はなにしてんだろ…
智くんの優しい介抱を受けながらも
考えるのは潤のことばかりで。
いつも、なんどきも…
隣で笑って、支えてくれて…
唯一無二の大切な…
「あ、翔!タクシー止まったみたいだぞ!」
智くんに引き摺られるように
覚束ない足取りで大通りへと向かう
もう、今日は早く寝て…
明日…休みだったな…
潤の家に行って謝ろう…
止まったタクシーの扉が開いて
重い足を一歩、踏み出そうとした時
見慣れた靴が視線に入り込んできて
「え…翔…っ?」
「じゅ、潤…」
「な、んで…泣いてるの…?」
上げてしまった顔を慌てて下げる
「だ、だって…お前が…避けたり…っ…」
あ、やべ…また溢れてきた…
「智、翔は俺が連れて帰るわ」
「え、あ、あぁ…じゃあ、頼んだ」
「ちょ…っ、いい!俺1人で帰るからっ…」
力の入らない体での抵抗は
意味をなさなくて
智くんに預けてた肩が
潤の手に渡されて
タクシーに押し込められた