第15章 shine of the palm
『あれ?この制服の着方って四葉さんの・・・でも四葉さんはさっき正解したし。着こなし方が不自然じゃないあたり・・・一織さん、ですね?』
自分が思うよりも早く当てられてしまったことに、困惑する。
「正解です。でも、なぜ私だと?制服の着方なんて誰が着ても変わらないでしょう?」
『そんな事ありませんよ?たまたま着た人と、普段から気慣れている人では体の感じが違うと思います。普段着ない人は制服だなんて窮屈だな・・・って思うような立ち振る舞いというか。でも日頃から気慣れている人なら、そんな事はないでしょう?』
職業柄とキャリアからの、着眼点の違いと言うべきでしょうか。
女優業はその役柄によって様々な衣装で役に入り込む。
そういったひとつひとつの感覚が身に付いている、と。
「佐伯さんにそんな特技があったんですね」
『特技?』
「なんでもありませんよ。それより、全員を見事に言い当てたんですから目隠しはもう必要ないですね。外してあげます」
キュッと締められた結び目に手を伸ばし、髪が絡まないように解く。
「少し髪が乱れてしまいましたね・・・・・・これで元通りです。目を開けていいですよ」
『ありがとうございます一織さん、あっ』
ようやく不自由な目隠しを外したというのに、目を開けた瞬間、佐伯さんはその目を両手で押さえて下を向く。
「どうしました?目がなにか・・・見せて下さい」
ゴミでも入っていたらと咄嗟に目を覆う手を外して、その距離感にハッと息を飲む。
『大丈夫です。ちょっと、眩しさに目がついていけなくて』
目を閉じたまま見上げる姿は、反則です・・・
「そ、そうですか。では目が慣れるまで、もう少しこうしておきましょう」
動揺を隠すように言って、今度は自分の手をそっと目に覆わせ、視線だけを外す。
こんな至近距離だなんて、いつかの事を思い出して冷静ではいられなくなってしまいそうだから。
「兄さん、イスをこちらにお願いします」
三「イス?あぁ、それもそうだな」
佐伯さんを座らせ覆っている手を外せば、光に目が慣れたのか少しずつその目を開けていく。
『眩しかった・・・でも大丈夫みたいです』
瞬きを繰り返すのを見て、またその距離感に視線を外す。
全く佐伯さんには、いつも驚かされますね・・・