第15章 shine of the palm
❁❁❁ 一織side ❁❁❁
壮「環くん、そろそろ離してあげた方がいいんじゃないかな?」
環「なんで?そーちゃんもギューしたいの?」
壮「そうじゃないよ」
環「じゃ、まだいいじゃん?」
壮「ダメだよ環くん。まだ全員が終わってないだろ?それに、愛聖さんだって環くんがずっとこうしていたら先に進めないから」
佐伯さんを抱きしめたまま離れようとしない四葉さんを逢坂さんが説得するのを見て、こういう時は二階堂さんではなく、やはりMEZZO"として一緒に行動する事が多い逢坂さんが適任なのだなと表情を和らげる。
それはいいとして。
クジ引きで決めた順番ですが、最後のメンバー当ては私です。
二階堂さんのようにちょっとした意地悪をするつもりはありませんが、簡単に当てられてしまうというのも・・・二階堂さんの言葉を借りるなら、面白くないだろ?といった所でしょう。
なので、私は。
普段から気慣れている学校の制服、それも私のではなく四葉さんの物をお借りしているんです。
とは言っても、そもそもの体格が違うのでオーバーサイズ気味ではありますが。
ユルっとした感じのジャケットを、四葉さんが着ているのを真似た感じにして前に出る。
社長や大神さんが他の人の服に着替えているのは服装で分かってしまうからという理由でしたが。
まさか私まで、しかも普段着ている制服に着替えているとは思わないでしょうから。
私の気配に気付き、そっと腕を伸ばす佐伯さんに、さぁどうぞ?と言わんばかりにその場で軽く腕を広げる。
そっと辿る指先がジャケットのボタンに触れて、そのままボタンの数を確かめるように動く。
『この生地の手触りとボタンの数・・・一織さんと四葉さんの学校の制服ですね?』
早くも着ているものを当てられてしまった事と、流れで自分の名前が出た事にスッと息を飲む。
『だけど四葉さんは制服じゃなかったし・・・そういえば始まる前は制服を着ている人はいなかったのに』
う~ん・・・と小首を傾げながら考え込む佐伯さんに、つい、口元が緩む。
この人はどうして、そう無防備に可愛らしい姿を見せるんでしょうか。
まるでリスやハムスターのような・・・いえ、今は余計な事は考えないようにしないと。
何がきっかけで正体がバレてしまうか分かりませんからね。