第11章 スタートライン
❁❁❁ 百side ❁❁❁
自分の家で1人でいるのが落ち着かないだろうから、ユキの部屋に転がり込んで···リビングでずっとマリーのことを考えてる。
あの時、いつもの感じで抱きついちゃったけど。
瞬間、マリーの体が強ばって···拒絶された感じに胸が痛くなった。
もちろん、あんな状況なのにオレが安易に抱き着いたのもいけなかったんだって事は分かってるけど。
楽は···平気だったのに、なんでオレは拒絶されたの?
そう思うと、どこかモヤモヤする感じがして。
そのモヤモヤがどうにもならなくて。
「なんでだよ···」
そんなどこにもやれない気持ちが、知らずと口から溢れ出していた。
もし、楽よりも先にオレがあの場に入ってたら。
もし、誰よりも早くマリーを見つけて駆け寄ってたら。
そしたら楽じゃなくて、マリーはオレの事をちゃんと···
違う。
そうじゃなくて!
「あぁ!もう!」
何度も方向修正しても不時着する考えに、つい大きな声を出しながらソファーに置かれたふわふわの大きなクッションを抱きしめて床に転がる。
楽があの時言ってた言葉、それは···
楽「俺も行く!愛聖は俺に···助けろって言ったんだ」
確かに、そう言ってた。
じゃあさ、オレは?
もし繋がった電話の相手がオレだったら、マリーはオレに助けてって···言った?
···わかんないや。
床に転がったまま、ハァ···と大きくため息をついて、抱きしめたクッションに顔を埋める。
心地よい柔らかさに引き寄せられるように、何度も、何度も、顔をつけたり離したりを繰り返す。
その度にふわっと香る華々しい甘い香りが、オレのササクレ立った気持ちを落ち着けてくれた。
あれ?···華々しくて、甘い、香り?
これってもしかして!!
「マリーの香りだ···」
ポツリと呟いて、またクッションに顔を埋めてみる。
大きく息を吸い込めば、それはやっぱり···マリーと同じ香りがして。
「そう言えばこのクッションって、マリーのお気に入りのやつだ···って事は、この香りはマリーの残り香ってやつ?」
千「そうね···」
突然のユキの声にハッとして振り返れば、そこには壁に寄り掛かるユキがいて。