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〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第11章 スタートライン


昔話という思い出話をゆっくりと話しながら、フッ···と繋いだ手から力が抜けた事に気が付いた。

どうやら俺の話を聞きながら、眠っちゃったみたいだ。

涙の後に貼り付いた髪を、逆の手でそっと耳にかけてやりながら···少しでも長く眠れることを願って布団を掛け直す。

眠くなるまでという約束で繋いだ手は、まだ離せないまま俺も布団に潜る。

時折、スン···と鼻を鳴らす愛聖を見ては、ちゃんと眠れているか確認して、また布団に入るのを繰り返した。

一定の感覚で聞こえてくる寝息と、小さな手の温もりに引き寄せられて、俺もいつの間にかウトウトし始めながら、それでも繋いだ手を離せないでいるのは···

きっとそれは。

俺の知らない、千と愛聖の···



まぁ···いいか。

いまはそんな事よりも、愛聖の事が優先だ。

子供の頃に知り合った、小さな女の子。

大人になったら女優さんになりたいの!って、いつも言ってて。

それを聞いた千が、ニヒルに笑いながら···

千「女優になるなら美人が条件じゃないの?···条件、満たされてる?」

なんてからかっては愛聖を拗ねさせて。

見慣れない天井を見つめながら、1人で昔のことを思い出す。

隣に目をやれば、素顔はまだまだ···あの頃と変わらない愛聖がいて小さな寝息を立てている。

まさか···大きな事務所で本当に女優になるとか、テレビで見た時は驚いたけど。

いろんな事情があって···いまは、ここにいる。

どんな端役でも、主役を食う勢いで頑張ってきた愛聖を···いったい誰がこんな目に合わせているんだ。

「負けるなよ、未来の大女優」

俺がしてあげられる事は少ないかも知れないけど。

でも、それでも全力でフォローするから。

ほんのりと暖かい手を握り直しながら呟いて、俺もそっと···瞼を落とした。

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