第4章 ψ接近!二人の距離
そりゃあ、私がどんなにやる気を出して挑んでも軽々超えられる力を持っているけども、形だけでも「頑張ろーね」とかなんか……ないですかね?
私が一人でモヤモヤしていると、斉木さんは椅子から立ち上がり、私の顔を覗き混んだ。
そして……
ムギュッ
「い、いひゃいれふ!(痛いです!)」
両手で頬をつねられた。
「なにひゅるんれふか!(何するんですか!)」
「ムカついたから」
「ひゃい?(はい?)」
「僕より研究の方がイイんでしょ?興奮するんでしょ?」
言い方いかがわしい……まぁそこは置いておこう。
この発言といい、不満げな表情といい、これはもしや。
「ひゃいきしゃん、もひかひて……ひっとれふか?(斉木さん、もしかして……嫉妬ですか?)」
「……は?」
私の発言に驚いた斉木さんは、掴んでいた手を緩めた。
ひりひりする頬をさすりながら、私は徐々に自分の発言の愚かさに気づいた。
嫉妬ですか?とか、斉木さんが私の事好きな前提で話してるじゃないか!
なんて厚顔無恥な発言なんだ……。
斉木さんは私の事はただの興味本意としか思ってないのだ。
結婚する約束はしたが“愛してる、大事にしたい”のではなく、“興味が湧いた、手元に置いておきたい”みたいなノリなんだろう。
「嫉妬……なんて、する訳ないし。この僕が」
「そ、そうですよね!失礼な事言って申し訳ないです」
うんうん、それでこそいつもの斉木さんだ!
一々研究する度に嫉妬なんてされたら溜まったものではない。これで安心だ。
安心、安心……な、筈なのに。
何故、胸の中が少しモヤッとするのだろう。
「何、変な顔してんの」
「えっ、あ、いえ、」
「研究進めたいんでしょ?」
「あ……、そうですね、研究進めましょう!」
私がドギマギしている間に、斉木さんは机上に置いてあったタブレットを指で操作し、既に作業を進めていた。
早い!切り替えも作業も早い!
流石、天才は時間を無駄にしない!私もドギマギしている場合ではない。斉木さんについて行けるように頑張らねば。
まず、斉木さんがどんなものを構想しているのかを確認しておく必要がある。
今タブレットで操作している設計図のようなものが、恐らく構想中のものだろう。