• テキストサイズ

IN DREAM2

第13章 青い炎


「よくできてる具現世界だな」
少しため息を混ぜながら自分の現状と向き合っているように思るこの時間は
ほんの少し安らぎでもあった
火族のスパイとしてヒルトを見張り、時にはインドリームとして戦う繰り返しで
ゆっくり過ごす時間がなかったのも要因だ
空気をいっぱい吸い込み、深呼吸するよう息を吐く
精神世界だから空気なんてない
それでも心が安らぐ気がした


「待たせたな」
その声は先の荒々しい者とは違い、冷静に落ち着いた声
闇の人格がなくなったことで本当の心が表面化したアドラだ
無くなっていた顔に穏やかな人の姿の時のアドラの顔があった

「よぉ、アドラ
ようやく出られたのか」
ジェイクは何も武器を構えず、丸腰のままアドラに近づく
いつ闇に飲まれるかわからない不安定な状態だと知っていても、これだけはしておきたかったのだ

両手を大きく広げ、アドラを正面から抱擁する
現実のように触れ合っている感覚はない
それでも、今まで以上にアドラと本心で話せていると実感する

「なぁジェイク
俺、今更お前の苦労がわかったよ」
「え?」
「闇の力を得る前、ヴァンさんと出会ってから
俺の人格がぐちゃぐちゃになっていくのが分かってた。
その時気付いたよ・・お前も、こんな思いしながら生きてたんだなって。」
「アドラ・・。」
「それでも夢を諦めるわけにはいかなかった
すぐ手を伸ばせば手に入る自由が、目の前にあったんだ
それがどんな方法だったとしても、欲しかった・・」

アドラはジェイクの手を肩から降ろし、話し続ける
「あの医者の精神世界でヒルト・クローズに言われたんだ
己の欲望のために力を振るうのは、俺達が嫌っていた火族の上層部と変わらない、と。
俺とお前、根本的に違っていたと思い知ったよ
どれだけ力を得て、肉体を強力にしても自分の為に力を使う者はインドリームにはなれなかった
けど、お前は友のために得た力を使い、闇に隠れた本当の俺の心を表に出すことに成功した」
「それはあいつらのおかげで―――」
「そう、だよな。
わかってる、お前だけの力じゃないって・・・
けど、お前はインドリームと戦い、俺を救う方法を模索したんだ
それだけでも素質ある奴の考え方だよ」
少し笑いながら、終始穏やかな表情をするアドラは唐突に歩き出す
ジェイクも横に並ぶように歩き、二人は崖の前て立ち止まり果てしなく広がる海を見つめる
/ 821ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp