第13章 青い炎
「い、今教えてほしい!
どんな方法なの?!」
ユリエフの両肩をつかみ、完治しきっていない傷口から
血がにじむほど力がこめられる
「アタイ、あの人に恩を受けてばっかりで
まだ何も返せてないの!
恩も返せず死なせたくない・・どんな方法だって受け入れる!」
「アンリさん・・・」
話すべきか、ローランを救出してから話すべきか
ユリエフは一瞬戸惑う
目線をそらし、クライブや仲間達を見つめると
誰もが同じ表情をする
今は話すべきではない、と。
優先順位があるのだ。
まずはアドラの救出
そしてヒルトとローランを現実世界へ呼びも戻す
更にこの異空間が閉じられる可能性を考慮し
安全な場所へ早急に撤退する必要がある
その後に、ローラン、アンリ、天族の契約について説明だ
この順番を間違えると全てが連鎖して壊れてしまう
すぐそこまで言いかけていたユリエフは口をつむり、
肩からアンリの手を優しく降ろし、治療を再会させる
「このことは全てが終わってからお二人に説明します。
なので、今は治療させてください」
ユリエフの真剣な眼差しに、アンリは我を取り戻し
自らの心拍数が上がっていることに気付く
(緊張しているせいでアタイらしくない、か・・・。)
深く深呼吸し、黙ってアンリは頷く
ユリエフは少し微笑み、治療を続けていった
闇の魔獣が消滅し、アドラとインドリーム達を隔てていた結界の壁が消え去り、防御に徹していたジェイクはすぐに体制を立て直して炎を宿した拳をアドラへ向けて大きく殴り込む
「てめぇっ!?」
アドラは闇の炎を宿した両手で防ぎ、ジェイクの攻撃を薙ぎ払う
「ずっと仲間のことを気にかけてたせいで
全力で戦えなかったってか?
どこまでなめてやがる」
腹の中から煮えくり返りそうな感情が素直にでる
だが、ジェイクは口元の血を手の甲でふき取り、冷静だった
「昔の俺だったら、きっとそうじゃなかっただろうな
けど、あいつらがいてくれるからお前と向き合える。
例え人に戻す方法がなくても、お前を闇から解放させることくらいはできる・・そうだろ?
ヒルト」
「?!」
アドラはすぐに危険を察知し、気配の正体へ振り向くと、蛇に飲み込まれたはずのローランとヒルトが意識を取り戻して立っていた
「もう出てきやがったのか」