
第13章 青い炎

ビーチェが持つナイフの刀身から永遠に湧き出ている毒
それを避けながら攻撃するのは難しく
イリヤとアランは自らの身を守ることに必死だった
「イリヤ、大丈夫?!」
息を切らしながらアランは双剣を構え
かすかに両手が震えているイリヤに気を配る
「大丈夫だよ」
隠せていない声に心配しかできない
イリヤは完全にビーチェと戦うというより
身を守ることしかできておらず
アランと息をあわせることができなかった
「この毒がどれだけ危険かわかってる土族は
うかつに近づくことはしない
賢明な判断だと思うわ」
ナイフの矛先をアランに向け、ビーチェはニヤリと笑う
そしてタバコを腰のポケットから取り出し
一服し始める
完全に格下だと見下した態度で肺に循環した煙を吐き出し
一息つく
「・・・あんた達はアドラを倒してどうするの?」
「は?」
突拍子もないビーチェの質問に、アランがやる気のない声がもれる
「あんた、いきなり何よ」
「気になったから質問したまでよ」
「暗殺者らしくないわね
気まぐれにしては核心的な質問じゃない」
双剣を握る力を緩め、アランはビーチェを睨みながら話す
「アドラを倒してどうするか、それはジェイクが決めることよ
本当のインドリームになろうとしてるあいつを
あたしは力になる。
アドラって人を救おうとあいつがするなら
それも力になるつもり。」
真剣な答えを求めていたわけではない
ビーチェにとって一方的に殺すだけの
この戦いに飽きてきいてみたが
やはり興味がわかないのだ
インドリームという特別な存在は
どうも心の中で光が絶えることがないらしい
仲間が裏切り者であったとしても
すぐに仲直りしてしまう
会話も戦いも楽しくなければ
ビーチェはここにいる意味すら考えてしまうのだ
「スーッ」
タバコからまた煙を吸いあげ
深く深呼吸をするように吐き出す
「あーあ、萎えるわ」
戦意損失したビーチェはアランとイリヤを見ることなく
偽物の空を見上げる
「アドラは自由を手に入れるために生き返った
それも闇を抱えてね
闇を払うのがインドリームの役目なら
アドラを蘇生させたヴァンの思惑通りに
インドリームは動いてるってことにならない?」
「あんた、何が知ってるの?」
「知らないわ
けど、想像はつく。
ヴァンはアドラでも火族の医者でもジェイクでもいいから
本物のインドリームを誕生させようとしてるの」
