第12章 炎の意志
「今のお前はクライヴ様を警戒している。」
「?!」(なぜ気付かれた?あたいは表情には出さなかったはず!今は完璧に・・)
「私をなめるなよ、火族の娘。
お前の心を読むなど容易いこと。
この脆い肉体でも精神操作術くらいは使える」
「っ・・精神操作術を使える騎士をあたいの近くに置くことで
監視させようってことね」
「ふふふっ、やっと気付いたかしら
戦闘に特化したサルナスや、知略に長けたアークではなく、低位の肉体でも精神操作が使用できる私を顕現化されたのよ
まさか、ただ負傷したから宿に移動させるために私がいると思ったのかしら?」
ラルザから語られる話に、何一つ言い返せなかった
現にローランの危機があれば、インドリームであっても見捨てるつもりでいたからだ
自分を信じ、新たな主人として側にいてくれたローランの為
アンリは全てをローランに捧げて生きている
これは戦闘民族である火族の特徴でもあった
世界に戦火を広げる火族は、古来から傭兵として雇われている事が多い
雇われるからこそ、戦があり、戦があるからこそ、火族としての使命を全うできる
人が生にしがみつくように、火族も己の主人にしがみつく
根強く刻まれたこの風習のせいで火族から捨てられたアンリでも
主人という存在が居なければ生きているとは言えなかった
「心の拠り所・・・そっか。
貴方もあたいも・・あのジェイクとかいう少年は同じなんじゃない」
僅かに鼻で笑い、アンリは風に包まれながらインドリームに続いて異空間に入っていく
「あたいが知る限りの事は強力するわ
そして、必ずローランさんを救う。」
「それでいいのよ、アンリ
この作戦にはお前の力が必要不可欠。」
赤い長髪をなびかせ、ラルザはアンリと並びながら歩き、満足そうに笑いながら答えた
時折見せるラルザの笑顔と闇に包まれた暗殺者として顔、そして闇の騎士としての顔
器用に切り分けていく姿はアンリにとってみれば絶対的な壁であり、抑制力だ
「ーーーーー」
何も語ることなく、風に包まれる中異空間に入っていく
異空間のゲートを開いたクライヴに目を向けると、他のインドリームとは別の表情をしていた
「どうしたんだクライヴ?」
真っ先に声をかけるヒルト