
第12章 炎の意志
「私は崇高なる主人を見つけ、時の流れに関与されない存在となった。
この肉体は仮のもの・・クライヴ様が生きておられる限り永遠に無くならないのよ」
「まさか、貴方が魂だけの存在になっていたなんてね
あたいを含めた他の火族が知れば度肝を抜かれると思うわ」
「ふふふ
皆、クライヴ様の偉大さを知ればいいのよ
下等な人間種と含めてね。」
闇の眷属となったラルザは昔からこういう表情をしていたのか
それとも、クライヴの元についてからなのか
ラルザの過去を知らないアンリは比較のしようがなかった
だが確実に言い切れるのは、もしラルザが暴走でもすれば止める事が出来る存在はクライヴただ一人だろう
(絶対に変な真似はできない)
アンリは唾を飲み込み、ラルザの前では大人しくすることを心に刻んだ
体奥に染み付いた生存本能が震え上がる
震える手先を抑え、ラルザの目線を追う
そこには風に包まれながらインドリームを引き連れ、異空間の中に入っていくクライヴがいた
「流石クライヴ様です
あの男の銃弾をわざと闇で喰らい、追跡されるために力を温存さていたのですね」
「?
だがあの傷は深手に見えたが?」
「確かに、両足の傷はわざとではないわ
けど、それで終わらせないのがあのお方よ。
二手、三手先を読まれるだけじゃない
その結果がご自身の目的達成に必ず繋がる・・本当に恐れ多いわ
私が何百年費やしても、あそこまで卓越した技術力や洞察力は持てない。」
「全て想定済みということね
それにしても、貴方の主人は何者なの?」
アンリの質問を待っていたかのように、ラルザはすぐに答えた
「闇族の第五王子であり、幾万の闇の眷属を従えてきた彼の方こそ、我々闇の騎士が忠義を尽くす至高の存在ーーーー
クライヴ・ベネディクト様よ。」
(あの闇堕ちが闇族の王子、クライヴ・ベネディクト?!
暗黒戦争で世界に闇を広めた張本人ですって?
そんな闇の根源のような存在がどうしてインドリームなんかと?
・・それに、火族の英雄であるラルザさんまでが魅力されるなんて・・・
いや、もしかして奴は表面上ではインドリームと協力し、裏ではローランさんの力を狙ってる可能性もある?
・・駄目、そんなこと絶対にさせないっ!)
「す、素晴らしいわ
こんな有名人が目の前にいるなんて、信じられない」
心の動揺を必死に隠しながらアンリは作り笑顔をラルザへ向ける
