第12章 炎の意志
「アラン、ライセイ、イリヤ、お前達はどうする?
ジェイクが拒絶したとしてもヒルトなら救えると信じ、力を振るうか?
それとも仲間を裏切った偽物のインドリームの元には向かうつもりはないか?」
「そんなの、答えは決まってるわ。」
「そうだぜ」
「イリヤ達はどんな時でも仲間だよ!
ジェイクを助けに行こう、皆んなで!」
「だったら決まりだな・・ユリエフ、アラン!
これから闇を街全体に覆わせる」
「わかりました!」
「準備は万端よ」
クライヴの闇が増幅し、宿屋を中心に屋内から屋外まで闇が広がっていく
「我が声に応え、この街に光の加護を与えたまえ」
「我が声に応え、光の加護の元、虚空の世界を作りたまえ」
闇が街を覆う前にすぐに光と水蒸気が発せられ、瞬く間に人々には幻影が見え始める
ほんの僅か、闇が広がったと思ったのは勘違いかと思わされるほどの幻影はユリエフとアランが術を止めるか、魔力が切れるまで持続する
大きな負担はないが、クライヴは早急に終わらせる為に前意識を集中させた
次第に有象無象に広がる闇は一直線の道に変わり、空に異空間のゲートを作り出した
「あれが入り口だ」
「よし、皆んな俺の風に乗ってくれ!」
ヒルトは風を吹き荒らせ、その場にいる全員を包んだ
クライヴの力によって開かれたゲートに向かうため、風に乗るインドリーム一行
そしてアンリとラルザも共に着きそう
「ーーー我が主人の邪魔をした暁にはお前の首を撥ねとばす。」
「・・あたいはそんなことしない。
彼等はローランさんを救うための唯一の協力者よ
変な真似はしないわ。
あたいは貴方の方が信頼できない・・その見た目から火族だったことはわかるけど、一体何者なの?」
ラルザとアンリはゲートに向かう間に交わす会話は
お互いを信頼など一切しない探り合う内容
そしてアンリの問いに答えるには言葉は必要なかった
口元を隠していた黒いベールを捲り上げ、舌を見せれば答えになったのだ
正確には、舌に入れられた魔印だ
炎族と闇族の紋章が重なったそれは、火族の中で伝説と呼ばれる暗殺者の証。
一夜で三ヶ国も同時に滅す事に成功させた者が持つ
火族であれば知らない者はいない
「うそ・・・でしょ?
貴方は何百年も前に行方不明になって死んでるはず・・」
震えが混じるアンリの声に、ラルザは再びベールで口を隠し、不気味な笑みを浮かべる
