第12章 炎の意志
「その仲間は強いの?」
「なんだよ、信頼されてねーんだな
クライヴはかなり強いぜ。
この街の奴らが束になって来ても傷一つつかられねぇ
まぁ、闇の神の仲間達が相手なら保証できないけど。」
「おい、ライセイ!」
アンリに喧嘩を売るように話すライセイ
それに対して真っ先に制したのはリーダーであるヒルトだった
アンリからしてライセイやヒルトの見た目は自分より少しだけ歳下に見える程度であり、それほど年齢差は感じない
にも関わらず、ライセイの子供染みた態度とヒルトの大人じみた態度は歴然とした差が現れていた
それはヒルトから感じるリーダー気質だけではない
火族として特殊訓練を培って来たアンリにしてみれば、ヒルトがただ者じゃないことくらいは判別つく
(このヒルトとか言う青年、本当にただの人間?
魔力・・・いや、奥に秘めているのは何の力?)
口から漏れそうな感情を押し殺し、アンリは深呼吸をして話す
「悪いけど、アタイはあんた達を全て信頼する事はできない
助けてもらったのは助かる。
けど、ローランさんが無事に戻らない限りは落ち着かないの」
「・・それはーーーー」
ヒルトがアンリの不安気な表情に答えようとしたその瞬間ーーー
突然窓ガラスが割れ、砕け散る破片と共に真紅の長髪をなびかせた美女が部屋に侵入してきた
「なっ!?」
「敵か!?」
アンリとライセイが身構え、己の武器を手に持つ
「待ってくれ!
この人は違う!」
ベットから飛び起き、ヒルトが女の前に立つ
そしてその視線の先には両脚から黒い血が流れ、苦しそうに息をする黒髪の青年
「クライヴ、しっかりしろ!
何があったんだよ!?」
「ヒルト・・すまない、奴が・・・
アルトリアの仲間に奇襲をかけられた」
「アルトリア?!
じゃあその両脚の傷はーーー」
「ヴァンという男の銃弾によるものだ
傷は治りかけているが・・まだ上手く歩けそうにない」
クライヴの肩に手を回し、ヒルトはベットに寝かせる
その様子を見つめる美女の首元にアンリはナイフを突きつけ、狂犬のように威嚇の眼差しを向ける
「あんた、何者?
その髪に瞳の色・・もしかして火族?
だとしても、この街にはいない奴よね
一体どこから来たの?」
「我が名はラルザ
我等が主人であるクライヴ・ベネディクト様に使える闇の騎士が一人。
そういう貴様は、火族の捨て駒だな?」
