第12章 炎の意志
木製の天井と視界の片隅にぼやけて見えるユリエフは
不安な表情で見つめ、ヒルトの左手を両手で握って見つめていた
「ユリエフ・・・・
俺・・・どうなって・・・?」
「ローランさんの助力で毒が解消されたんです
よかった、意識を取り戻して下さって。」
「えっと・・あの白髪の医者が俺を助けてくれたのか
礼を言わないと―――」
「ヒルト、まだ寝てないとだめよ
それにローランさんとクライヴは外にいるけど、またすぐに戻ってくるわ」
「そうだぜ、何よりお前が無事でよかった」
「イリヤ達心配したんだよ!」
「アラン、ライセイ、イリヤ・・
ごめん、心配かけて迷惑もかけてしまったよな
けど俺はーーー」
「わかってるわよ
あんたはリーダーとしてジェイクを信じた
それだけで十分。」
「アラン・・・」
「何があったかはクライヴとユリエフからも聞いてる
これからローランさんの助力で、火族の遺跡に向かってジェイクの居場所を突き止めるの。
今はクライヴとローランさんが外にいるけど、もうすぐ戻ってくるはずよ。」
「火族の遺跡?」
「かつて死風の暗殺部隊が訓練し、多くの生贄を捧げた場所よ」
「!?」
突如聞きなれない声がした
その方向へその場にいた全員の目線が向けられ、事情を知らないヒルトは目を丸くして見つめる
赤髪に赤い瞳
体の所々に包帯を巻き、簡易な鎧を装着した少女が隣部屋の入口に立っていたのだ
「アタイの傷を直してくれたのは天族の方?」
「あ、はい」
「礼を言うわ。
それと、ローランさんを助けてくれた事も。」
まだ立ち上がれる程回復できていないはずだ
それでもアンリは顔色変えず冷静に辺りを見渡し、いるはずの存在が見当たらないことに気がかりでいた
「ローランさんはどこ?」
アンリにとってローランは命に代えても守らなければいけない存在であり、必ず離れてはいけない
それはローランと交わした契約であり、今までずっとそうしてきた
だが、今初めてローランと離れたことを知り、口調は冷静で問うが心の中は取り乱している
「あの医者なら、一度病院に戻って荷物をまとめるっていって出て行ったぜ
もちろん、俺たちの仲間が1人護衛で付いてな」
ライセイの気楽な返事にアンリの中で苛立ちの火が芽生える
ーーー何をそんな悠長なことを言っているのか、と。