第12章 炎の意志
何度動かしても反応がないクライヴを見つめ、男は狂ったように笑っていき、クライヴに背を向けて歩いていく
「これで・・俺は大金持ちだ!
前金だけでも十分だったが、残り金を受け取ればこんな腐った街からでも出ていける・・俺の好きなように生きれる
あの半端な医者に媚売る必要もないんだ!
はは・・ははは―――」
男は笑い声を最後にその息は途絶える
そうさせたのは、大量の血を流しながらも起き上がり、男の首を勢いよく跳ねたからだ
「はぁ・・・・・はぁ・・・・」
クライヴは瞳を真っ赤に光らせながら気配を隠して男を殺し、首を投げ飛ばし、神経が残っている胴体に闇を染み込ませた
「我が声に・・・応えよ・・・・闇の騎士ラルザよ・・・」
クライヴの闇と共に赤い魂はすぐに死体へ憑依し、死体から女性の肉体へ変形していく
真紅の長髪をなびかせ、受肉したラルザを見るとクライヴはふらつき、その場に倒れそうになる
「クライヴ様!」
すぐにラルザが抱え込み、クライヴをゆっくり起こす
「血を・・・流しすぎた・・・」
「っ・・・私がすぐに餌を捕獲し、肉体再生の手助けを」
「いや、ヒルト達のもとに・・・連れて行ってほしい・・・」
「な!
お言葉ですが、一刻も早く止血するためにも、流した血の分、補給しなければいけません」
「いつまでも・・・そんなかとをしていれば・・・この肉体は血を求める
俺は・・できるだけ殺戮衝動を抑えるために・・・餌は・・必要としない・・
それよりも先に・・ローランの事を・・あいつらに・・・」
息苦しそうに話し、吐血するクライヴを抱きかかえていたラルザは深呼吸し、すぐにクライヴの命令を優先させた
「インドリーム達との合流を優先します
どうか、無理はなさらず、必要としているものは何でも申し付けください。
私がどんな犠牲を払ってでも差し出します」
「あぁ・・他にも頼みたいことがある・・・が、まずは・・・合流する
面倒なことになる前に・・ここから立ち去るぞ」
「御意」
ラルザは自信の影に闇を浸透させ、クライヴを抱きかかえたまま闇の中に身を沈めて消えた
向かった先はインドリームが待つ宿屋
ローランの病院と宿屋は遠く離れており、ちょうど宿屋の窓から死角に位置する場所であったため、爆発や銃撃の騒動をしることもなく、彼等はただ静かに帰りを待っているのだった
