第12章 炎の意志
打ち抜かれた弾丸は魔法の力によってわざとクライヴの肉体に宿り、その場で傷が回復しないように回転して肉体再生を妨害する
うめき声と絶叫が混じるクライヴの両足、右肩からは闇で染まり汚された黒い血が飛び散り、傷が広がる度に寄生虫が闇の呪印を肉体に刻みながら肉体を再生させる
死臭よりもきつい異臭を漂わせながら黒い煙を吹き出し、ローランは思わず口と鼻を手で隠し、嘔吐する
「う゛っえぇぇ」
その匂いは医者として何度もかいてきた体内のものではなく、死者と相違ない死の匂い
生者では耐えられないものだった
「どぉよ、俺らのボスはこんな気持ちわりぃ肉体を簡単に作っちゃうんだわ。
本当にすげぇし、おっかねぇだろ?
もし、あんたが俺らに協力しねぇなら、アンリちゃんを誘拐して王子様と同じ体に造り替えてって俺がおねだりしちゃうわ」
「なっ?!」
「嫌だよなぁ?
あんたにとって大切な存在なんだろ?
だったら、グズグズしてねぇで言う通りにしろ」
ヴァンの脅迫にローランは全身を震え上がらせながら
息をのみ、立ち上がる
「僕が行けば・・彼にこれ以上危害を加えないと約束してくれ」
「おう、いいぜ。
目的はあんただからな。」
ヴァンは異空間へつながるゲートの扉をどこからか開け、ローランに入るよう促す
「―――――・・・。」
恐る恐るゲートに足を進めるローラン
ゲートに入る前に東の方角へ目を向けると、ヴァンが持つ銃と極似たスナイパーを持つ火族の男を捕えた
「まさか、彼の腕を吹き飛ばす為に、この街の火族を雇ったのか?!」
「ハハハッ
大金をちらつかせたらすぐに承諾したぜ?
腐っても火族は戦闘民族だ
その血が流れてる以上、どこにいても戦場や金を求める定めなんだよ」
「・・・なんてことを・・。」
ローランはうつむきながら足を進め、ヴァンと共にゲートへ消えていく
その場に残されたクライヴはうつむいたまま身動きをせず、スナイパーだった火族の男はゆっくり近づく
「・・・死んだ、のか?」
傷を修復する度にあふれていた闇の煙は消え、黒い血が傷口から流れ、動かないクライヴの頭部に銃口をつきつけ、反応を確かめた