第12章 炎の意志
「おぉ。
俺様の名前を覚えてるとは、さすがだぜ
魔法弾で両目と脳みその一部をぶち抜いたのに、あの時のことを覚えてるとはね」
「っ・・・忘れるはずがない
お前達が何をしたのか、忘れたことがない!」
睨みつくすクライヴ
その傍らでローランは恐怖ではなく、疑いの目を向けていた
「闇族の・・王子?」
聞き間違い等ではない
確かに今、クライヴの事を闇族の王子と呼んだのだ
闇堕ちの見た目は黒髪に赤い瞳で統一されることから、元の部族の特定が難しく、どのエレメンツを持ち、どんな能力を所有しているのか不明確であるため、世界中から避けられていた存在
しかし、医者であるローランは差別ですことなく闇堕ちでも傷を癒し、看病していた
そんな彼の心は初めて疑いを持つ
目の前の闇堕ちのクライヴが、闇族の王子だったということによって―――――。
「よぉ、お医者様。
この前はアルトリア達と一緒だったが、あんたも俺の事は覚えてるよな?」
「もちろんさ・・・君のことは特に印象深かったからね
それで、僕に何のようだい?
元火族の暗殺部隊長、ヴアン・トレイン君」
「へぇ、俺の過去も知ってるとは驚いた
これも炎のインドリームの力のおかげか?」
「!!」
ヴアンはニヤつきながら椅子から立ち上がり、ローランへゆっくり近づく
手汗が滲みだしながらローランは硬直する体を動かそうとするが、最善の方法がわからないまま、目前にヴァンが迫る
「あんたのその力、亡霊たちの為に譲ってくれねぇかなぁ?」
「なん、だって・・・?」
「インドリームの力があれば、亡霊達は満足するんだ
今は半分が〝こちら側〟にあるが、あいつは偽物だからな。
いずれ消えゆく残りカスに用はねぇんだよ」
「それはつまり・・・―――――」
ヴァンの話にローランは応えようとした時、ヴァンの背後から深淵の闇を纏ったクライヴの大鎌が振り下ろされ、会話は途切れさせる
金属が弾き返される音が響く
「ったく、躾がなってねぇな
お父ちゃんにいいつけしちゃうぜ?」
「ローラン!
逃げろ!
この男は危険すぎる!」
「クライヴ君・・・!」
クライヴの大鎌を片手で掴み取り、ヴァンは余裕の笑みを浮かべる
だが、クライヴは冷汗を流しながら大鎌を握る力を弱めることがなかった
突然の出来事で戸惑うローラン
客観的に見れば劣性状況なのは明白だった
