第12章 炎の意志
「どんな情報でもいい。
あんたが知っていることを知りたい」
「・・・」
薄暗い玄関で立ちつくすローランはクライヴに背をむけたまま、返す言葉がなかった
「君の知りたがりなところは、いつか身を亡ぼすよ」
「!」
そんなことを聞きたいのではない――――
クライヴの心の中で苛立ちがよぎる
ローランは協力すると提案するが、有力な情報を小出しに提供するのみで肝心な事を話そうとはしなかった
それはヒルトが目覚めた後に話す気があるからではない
できる限り、話したくないのだ
可能であればインドリームとも関わりたくないのだろう
そんな雰囲気や素振りが増えていく
ローラン自身の過去や、炎の能力のことを知られればしの都度口を閉ざしていった
まるでジェイクを見ているような気持ちになるほど、似ていたのだ
「・・・言いたくないなら、もういい。
俺は俺のやり方で情報を集める」
クライヴは決してローランの心に土足で踏み込むような真似はしない
だが、目的に非協力的な存在であれば直接干渉はしないが、一切の寛容さを見せない
それが彼なりの善処であり、最大限の譲歩だ
結果的にローランが傷つくことがあったとしても、己のやり方が間違いではないか、等の疑問は一切もたない
目的を果たすには、犠牲が必要である
嫌になるまで経験してきた理で世界は回っている
そんなこと数百年生きてきたクライヴにしてみれば、息をすることと同じくらい当たり前の常識だ
「へぇ、意外と口が堅いんだな、あんた」
「?!」
「なっ?!」
いつの間にか廊下に置かれていた椅子に座り、葉巻を咥えて話す男の声が響いた
赤紙の短髪に両手と両足には闇の魔力が宿った義手、義足をはめ、上半身には銃弾を巻き付けた傭兵姿の大男
「お前はっ・・!」
クライヴはすぐに身構え、大鎌を取り出そうとするが、体が震え、すぐに力を使うことができなかった
(クソッ!
こんな時に体が動かないだと?!)
「ハハハハ!
子犬みてぇに震えちゃって、かわいいもんだぜクライヴ・ベネディクト
闇の族の王子様だってのに、そんなんじゃ神様のお父ちゃんも悲しむぜ」
「黙れ!
それ以上喋るな!
一体何が目的だ、ヴァン・トレイン!」