第12章 炎の意志
「それなら、インドリームと共にいることで君にいい影響を与えているのだろうね」
「・・おそらくな」
「ほんと、うらやましい限りだ」
ローランはクライヴに背を向けたまま語り、そのまま歩く
街の中止部から離れ、こじんまりとした一軒の2階建ての建物が見えきた
土壁に四角い形で入口の木扉の上には病院を意味する赤い十字架が描かれている
「ここが僕の家、兼、仕事場だ
入ってくれ」
ローランは扉を開け、玄関に鍵をかけ、真っ直ぐに往診室に入り、壁にかかっていた魔力装置に触れる
ローランの魔力は屋内のすべての灯りに行き届き、薄暗かった空間に光が入る
「さてと、あの遺跡に行くなら移動式の魔石と・・・記録紙と・・・」
カバンの中に医療道具や水晶等を詰め込み、独り言で必要な機材名を呟く中、クライヴは壁にかけられていた写真に目が止まる
赤髪の少年が車椅子に座り、白髪のローランが2人で写っている
その少年の容姿はジェイクそのものであり、瓜二つだった
唯一違うのは、写真でもわかるほど、少年の目には光が宿りインドリームと同じ眼差しだった
時折見せるジェイクの冷たい眼差しは微塵も感じない
「ーーー・・・ローランさん
この少年は今、どこにいるか知っているか?」
「ーーーあぁ、その子はもういないよ
数年前に僕に力を譲って亡くなったヒエンだからね」
「こいつが?」
「そう、彼は瀕死状態で僕が見つけた
・・見つけた時は、全身の皮膚が無くなっていて、無残な姿だったよ」
「・・・」(見た目はジェイクと瓜二つのこの少年・・ローランにインドリームの力を譲った理由は命が途切れる事を知っていたからか?
だとすれば、ジェイクはどうやってインドリームの力を得ることができた?
魔力には型があり、それを可能にする方法ーーーそれは・・・)
「さて、荷物は済んだ
インドリームの元へ戻ろう」
「あぁ。」
ローランは先の倍の荷物を抱え、クライヴを連れて病室を後にする
クライヴにとってみればただの付き添いで終わらせるはずだったが、ヒエンとローラン、ジェイクの共通点に気づき、とある真実を突き止めたかった
「ローラン、あんたはジェイクの事も知ってるのか?」
扉を開ければ外に出れる一歩手前で、クライヴの問いにローランの体が止まる
「ーーーーどうかな。
僕の知識が君達の〝知っている〟に繋がるかわからない」
