第12章 炎の意志
カレッツァ街を歩く中、多くの火族がローランとクライヴを見つめ、警戒の眼差しをむける
戦闘民族と呼ばれる火族はもともと外部の人間に対して友好的ではない
ましてや闇堕ちとなれば余計だ
彼らが友好的な会話をするのは、同族である仲間と、恩を感じた相手と、ビジネスパートナーである雇い主のみ。
暗黒戦闘から逃げ出し、四肢の一部を失くした者や心に深い傷を負った者、盗賊や戦を好まなくなった者達の集団にはどの種族も手を差し伸べることはなく、むしろ命を狙われやすかった
そんな彼らを救ったのは誰でもなくローランであり、彼等はローランに危害を加える存在がいれば生死を問わない戦いを挑む
照りつける日差しから隠れているわけではなく、物陰からいつでもクライヴに奇襲を仕掛けれるように狙っている彼らに対し、ローランは笑顔で手を振る
「僕は大丈夫だよ
彼は僕を救ってくれた・・危害を加えるような存在じゃない」
ローランの言葉を聞いた者は肩の力を抜き、腰に装着していた剣や服の中に隠していた暗殺器を収める
「・・・よほどお前に恩を感じているようだな」
冷静な目で周囲を見渡し、クライヴは静かに語った
「そう。
彼からは全てを失い、やっと生きる希望を見つけれた者達だ
僕は、彼等にとって恩人なんだろうが、そんものを感じてほしいとは思っていない」
「・・・」
「ただ笑って生き、その生涯に悔いがなかったと思ってくれればいいんだ
火族と風族の半分の血が混ざった僕を、大半は追放しろと言っていた時期があったが、一部の火族はそれを反対してくれた。
僕はその人たちのおかげで医者になれ、今にいたる
それがこの街にいる火族と同じ人たちじゃなくても、僕は一人の命は尊いものだと教えてくれた
だから僕は、彼らがどれだけ世間から嫌われ、この街で医者として力になると誓っているんだ。」
「なるほどな
どこにいってもあんなみたいな人に大衆は惹かれる」
「フッ・・君こそ闇堕ちだけど他の闇堕ちとは違う気がするよ
インドリームと一緒にいるおかげだけじゃないね」
「どうだろうな
・・俺はあいつに・・ヒルトに何度も救われたことがある。
今の俺はきっと、あいつの影響をうけたからだろう」