第12章 炎の意志
「そんな危険な集団がいると民に知られば、混乱が招くからですよ
ですからこの事を知っているのは、各部族の中でも限られた者達です」
「元は世界を旅する民、風族が掴んだ情報だ。
そしてこの事はヒルトも知っているはずだ」
「そっか・・」
クライヴとユリエフの説明に対し、イリヤは意識を無くし、眠っているヒルトを見つめながら多くは語らなかった
「よければ、僕も助力したい
だから、遺跡に行くときは同行してもよいかな?」
「ですがローランさんは休まれた方がいいのでは・・・」
「心配しなくても大丈夫だよ、ユリエフさん
僕は医者だから、こう見えて3日間眠らず患者を診ていた時もあるし、体力には自信はある
僕の知識も火族の情報を掴む際に必要だと思うしね」
ローランから提案に対し、ユリエフは若干の抵抗は感じたが、クライヴが止めない事や、誰も否定しないため、甘んじて受け入れることにした
左手に手袋をはめなおし、ローランは眠りにつくヒルトの額の汗をタオルでふき取り、深く深呼吸する
「ゲホッ ゲホッ」
枯れた声で咳き込み、ヒルトは口から木の根の塊のようなものを吐きだし、ローランはすぐに小瓶を取り出して魔樹を封印した
小さな札が張られた小瓶の中に封じられた真珠はまるで意志を持っているかのようにうねりながら動き、瓶底に張り付く
対してローランはヒルトを優しく見守り、軽く微笑んだ
安からなに満たされたその表情をみれば、誰でも理解できた
ヒルトの治療は成功したのだと――――。
「これで彼は大丈夫だ
あとは休ませておけば問題ないだろう」
「ローランさん、本当にありがとうございます」
「気にしないでくれ、ユリエフさん
僕は医者として当然のことをしたまでだ。
それに、君たちにはアンリを助けてもらったお礼もある」
「あの赤髪の女の子のことね
・・もしかして、あの外見から察するにアンリって子は火族なのかしら?」
アランの問いに対し、全員の視線がローランへ向けられる
「・・・」
すぐに応えようとせず、机に広げた医療器具や本をバックの中へ収納しするローラン
そして一間を開けて肯定の回答が返ってきた
「彼女は火族として生まれ、それ相応の教育をされてきたようだが、今は関係ないよ
数年前に僕と出会ってかなり社交的になったし、いきなり君たちを襲うことはないだろう」
