第12章 炎の意志
「この男がアルトリアと接触していて、冷静になれだと?
そんな事ができるのはユリエフ・・お前だけだ」
「でしたら私のいうことを聞いて武器を下ろしてください!
ヒルト君の命を救ってくれた恩人ですよ。
そんな人に武器を向けるなんて、どうかしてます
アランさんやライセイ君、イリヤさんも落ち着いて下さい」
「ーーーー」
緊迫した空気が張り詰める中、武器を下ろそうとしない3人にむかって、ローランはため息混じりに口を開けて話す
「君達がアルトリアを恐れる理由は知っている
闇の神を復活させられ、大きな傷を負ったからだ・・・
けど、安心してほしい
僕はアルトリア達の味方じゃない」
「それはどう証明できるんだよ?」
「危険な存在と接触すれば仲間だと判断するのは軽率だと思うよ
第一、君達もある意味アルトリア達と接触したのだろう?
だったら僕も君達を疑わざるを得なくなる」
「・・・」
「まぁ、こんな不毛な言い争いはやめておこう
僕がアルトリア達の味方じゃないのは、この炎が意味する
これは君達の力の欠片であり、僕は生命力と寿命を犠牲にしてこれを行使することを許されている。
試しにそうだな・・クライヴ君、君の闇をこの炎に侵食させてみてくれ」
「・・・あぁ」
クライヴは隠していた拳から溢れる闇を炎へ近づける
だが、炎と闇は混じり合うことなく、クライヴの闇は消滅していった
「クライヴの闇が消滅した?!」
「この消滅の仕方は天族がもつ光の相殺とは別です
つまり、ローランさんの炎はインドリームの力ということを意味します」
ローラン以外の全員が驚きを隠せない中、クライヴは疑念が解消されないまま冷静に様子を見守る
「僕は昔、とある青年と出会ってこの力を譲り受けた
然るべき時が来るまで僕が預かることにしたんだ
ほとんどこの力を使うことはないが、アルトリアのような堕天使にはわかるのだろう
彼女は仲間を引き連れて僕に提案をもちかけてきた
『大切な人を守る力と、将来を得るために、今ある能力を引き渡せ』とね。
勿論、断った・・死を覚悟する瞬間だったけど、アルトリア達は何もせず引き下がったんだ」
「あのアルトリアさんが勝手に引き下がるなんて考えられませんが・・本当に何ともないのですか?」
「僕が認識する範囲ではね。」