第12章 炎の意志
クライヴは右手をマントに隠しながら話すが、その腕からは闇が漏れ出しており、緊迫した空気が漂う
「話せば長くなる
僕が魔樹を治せるのは、僕だけの力じゃない」
ローランは左手の手袋を外し、僅かな炎を出現させた
その炎は僅かに光をまとった輝かしい炎であり、インドリーム全員は神秘的な気持ちにおおわれる
「僕は生まれつきの能力者じゃない。
この炎はとある存在から受け継いだものであり、同時に記憶ももらった
魔樹を治すための術も、その人の記憶にあったものだ」
「待ってください
能力を受け継いだということは、その人の魔力を体内に宿していること意味します
ですが魔力にも型が数多くあり、型に合わない魔力を体内に宿せば生命力や肉体に負担がかかるはず。
よくても体の一部を失うという大きな犠牲を払うことになりますが、ローランさんは魔力の型が合ったということなのですか?
そもそも、魔力の型が合うかなんて調べるには天族の力が必要になります」
「ユリエフちゃんは〝こういう話〟には敏感なんだね」
「当たり前です
私は天族の中でも責任ある立場の者ですので。」
クライヴに続き、ユリエフからも警戒と疑いの眼差しを向けられてもなお、ローランは落ち着いた表情で揺らめく炎を見つめ、目を閉じながら話し続ける
「安心してくれ。
僕の魔力と〝彼〟の魔力は型が殆ど合ってない
だからこの髪の色が全ての犠牲の象徴だ。
見た目はそう感じさせなくとも、内臓や骨は本来の年齢以上の物になっている
それに、後から嘘つきだと思われたくないから先に言っておく」
左手の炎を地面に落とし、人差し指を指すとその炎はとある存在の形へ変形していく
それはインドリームにとって見覚えのある男と女のもの
忠実に再現された炎からは、男女の邪悪な表情や魔力まで感じるほど鮮明であり、その場にいた全員がこびり付いた恐怖に縛られる
「堕天使アルトリアと、元火族の軍隊の総隊長だったヴァンだ」
「?!」
闇の神を復活させ、インドリームを一方的に嬲り殺しかけた集団の主犯格のアルトリアと、その仲間のヴァンが既にローランと接触していたことを意味するその炎に、クライヴ、アラン、イリヤ、ライセイが武器を構えようとする
「皆さん、待ってください!」
たった1人だけ制したユリエフの声に、クライヴは疑念を持ちながら納得できずに大鎌をローランへ突きつけた
