第12章 炎の意志
ベットで寝ていたヒルトはとっさに起き上がり、壁に背をつけるほど、ローランを恐れているようだった
「ヒルト君?」
「え、あ・・・」
「どうしたんですか?
ローランさんも、汗がすごいですが・・」
「ぼ、僕は暑いだけさ
すこし、緊張もしていてね・・ははは」
愛想笑い混じりの見苦しい反応を返すローラン
いまいち状況が掴めなかったユリエフはアランとイリヤと目を合わせて確認するが、誰も詳しいことは理解できなかった
「ではまず、ローランさんの治療からします
その次はローランさん・・ヒルト君の解毒に力をかしてください」
「あぁ、わかったよ」
ユリエフは両手から光の輪を作り出し、ローランの全身を通過させていく
光の輪は頭部から足の指先まで通り、髪の傷みから爪の汚れ、服の穴まで完全に修復され、同時にローランの中で募っていた疲労感も解消されていった
「君は本当にすごいな
医者である僕でもこんな治癒はできない」
光の輪が消えるのと同時にローランは手を広げながら、肩を回して関節をほぐす
「さて、これでローランさんの傷は癒えたはずです
あとは、ヒルト君ですね」
「・・・」
「ヒルト君?」
「え、あ、何か言ってたか?」
虚ろな表情で宙を見つめ、意識が朦朧としていたヒルトは
ユリエフの呼びかけに応えれず、額から流れる汗を腕で拭き取る
「まったく、あんたは横になってなさいよヒルト
起き上がって話すのは後でも出来るんだから」
「アランの言う通りだ、ヒルト
毒の影響で全身に痣や呪印が浮き始めているだろ
それをローランとユリエフに見せて治療してもらえ」
「全身に痣や呪印?
そんなものが出始めているのか?!」
「わかるの?
ローランさん」
クライヴの言葉に反応し、ローランは腰からぶら下げたバックに手を伸ばし、医療器具や錠剤を取り出して机に並べていく
イリヤが問いかけようと、その声に反応することなく一心に医療本と火族の歴史書を開き始めた
胸ポケットから丸メガネを取り出し、医療本に記載された人体の解剖図を指で押さえながらある小瓶に手が伸びる
それはアンリと共に遺跡調査をするにあたり、発見した解毒薬
そしてそれこそがヒルトの体に植え付けられた毒を無くせる唯一のものだった