第12章 炎の意志
肩まで伸びた白髪を揺らしながら、長い前髪は金属の髪留めで後ろに束ね、赤い瞳のローランはユリエフを見つめ、動揺を隠せずにいた
「・・・驚いた
本当に天族と会えるなんて!」
薄汚れた白衣を脱ぎ、腕にかけながらローランはユリエフの前で膝をつき、敬意を表した
「私の名はローラン・ブラシェフ
火族専属の医者であり、遺跡調査士でもある
君たちが助けてくれなければ、僕もアンリも砂漠で息絶えていただろう
この恩は感謝する・・」
「そこまで感謝されることはまだできていませんし、敬意を表される程の存在ではありません
どうか、立ち上がってこちらに座ってください」
ユリエフは近くの椅子をローランの前に置き、優しく微笑んだ
「かたじけない」
ローランを座らせた後、ユリエフは先にアンリの容態が急を要するのがすぐにわかった
「アランさん、イリヤさん
彼女の治療をしますので手伝ってください」
「わかったわ」
「うん」
ヒルトが寝ているベットの向かいに位置する扉を開け、ライセイが抱えていたアンリはユリエフに引き取られ、別室へ入っていく
「今からこちらで治療しますので、男性の皆さんは少し待っていてください」
厳しく言い放ち、ユリエフは扉を閉める
「・・・・彼女、とても経験を積まれているようだね
あの表情をみていると、医者である僕ならすぐにわかる
今まで多くの人の傷を癒し、救ってきたんだろう」
「ユリエフは天族だし、きっと俺たち以上に生きて経験はしてると思う」
「そうか・・すばらしい天族だ
それはさておき、えっと、君は・・」
「俺はヒルト・クローズ
風を司るインドリームでリーダーだ」
「!
これは失礼した!
君がリーダーだったのか・・だが君、顔色がひどいぞ?」
「ローランさん、そいつは今、火族の猛毒に侵されている
本来であれば、意識不明の重体だが、ユリエフの治癒力が少し効いているのだろう」
「なっ?!」
クライヴは入口の扉を閉め、その前でもたれながら冷静に話した
「俺たちが砂漠の中であんたを見つけた、助けたのはただのお人よしなんかじゃない
それくらい、わかっているつもりで話しを進めるぞ」
「あぁ。」