第12章 炎の意志
薄暗い部屋の中、ベットに寝かされながらも、うなされるヒルトの汗を拭きとりながら、ユリエフはずっと治癒を絶やさない
煉瓦との木材で造られた簡素な宿屋には静寂に包まれている
外から照りつける灼熱の太陽光をうまく遮断できるように外壁作りに力を入れているカレッツァ街の建物は、どうしても内装は質素で簡素的になる
そのうえ火族以外が立ち寄ろうとしない場所である故に、そうそう宿屋は需要がない商売だ
主に一階の酒場で生計をたてている宿屋の主人は、数年ぶりの旅人を見てたいそう驚いただろう
それも天族と闇堕ちが共にする青年や少女達の集まであり、その正体がインドリームだから余計だ
「はぁ・・・はぁ・・がんばってください、ヒルト君
きっと皆さんが解毒剤につながる情報をもってかえって来てくれます」
半日間休まず魔力を消耗しているユリエフは仰向けに寝ているヒルトに語り掛け、隣に置かれえいた小さなタンスの上にあるグラスに手をのばし、事前にアランが容易していた水を飲む
ゴクンと水が喉の奥を通る音の直後に、治癒を続けていたユリエフの左手を彼が握った
「――――ユリエフ・・無理しないでくれ・・」
汗をかきながら虚ろな目で意識を取り戻したヒルトは優しくユリエフの手を握り、優しく語りかける
「ヒルト君!
意識が戻るなんて・・奇跡です・・」
「俺は大丈夫だから・・・・それより、俺はユリエフの方が心配だ」
「大丈夫です。
私は天族の第7聖人であり、光の加護を授かったインドリームですよ
少し休めば、すぐに魔力は回復します。
ヒルト君が私たちの事を気にかけてくださるのは、リーダーとしてとても尊敬します
ですが、少しはご自身の身も考えてください!
皆さん、とても心配しているんですから。」
「・・・そうだな、ごめん」
ヒルトは右腕で目を隠し、しばらく黙りこんでから深呼吸した
「なぁユリエフ」
「はい」
「ジェイクのことだけど・・・俺はあいつが心の底から裏切ったとは思えないんだ」
「それは・・私もそう思います
けど、ライセイ君やクライ君はどう考えているのでしょうね
少なくとも、彼は火族として私達と接している時もあり、インドリームとして戦ってくれている面もありました。
今の状況だけでは答えはでませんね」