第12章 炎の意志
魚の鱗のように1枚ずつ刃が分かれ、斬撃にと変が自由な柔軟性を持ち合わせた男の武器を見つめ、クライヴは古い過去の記憶を思い出す
「その武器は森の民、エルフ一族で作られた鞭を基盤に改造した武器か
確かエルフが作る鞭はゴムの木の樹脂が主になるが、鉄を加えるとなれば樹脂では作れないはずだな」
「ほぉ、闇堕ちのくせに、物知りじゃねぇか
そこの金髪のガキもてめぇも何者か知った事ねぇが、俺たち火族に喧嘩を売った事を後悔させてやる!」
上半身に軽装な鉄鋼のプレートを装着し、黒い髪を束ね、髭を疎らに生やした男は鞭をクライヴに目掛けて放つ
右往左往し、一定の動きがない鞭の先端は鋭い剣先になり、猛毒が塗られていた
その事を知らず、クライヴは鞭を交わしながらでも剣先が頬にかする
「ーーーー」
頬をかすったことで傷口から毒が侵食し、クライヴはすぐに傷口に手を当てて違和感に気づく
「ははは!
その毒に触れれば終わりだよ!
強靭な土族であっても体が硬直し、死に至らせる事が出来た代物だ
お前みたいな闇堕ちだったらすぐに」
「すぐに闇に喰われて消滅する、か?」
「?!」
クライヴは内側から込み上げてくる闇を右手に凝縮し、1つの漆黒の炎を作り出した
拳程度の漆黒の炎を指先で操り、更に小さな闇の炎を出現させる
作り出された炎はまるで歓喜の舞をするように手のひらで円を描き、回転する
その異様な光景に、火族の男は唾を飲み込んだ
「てめぇ、一体何者なんだ?!」
「さぁな。
今のお前たちに明かす必要はないだろ
もっとも、お前たち火族の外れ者がこの街に滞在している医者のことを話せば、俺の正体を教えてやってもいい」
「ふ、ふざけんなー!」
鞭を回転させながらクライヴへ目掛けて放つ
「こんなものか」
「?!」
目にも止まらない速さで目前に迫っていたクライヴの動きを捉えることができず、そのまま頭部に漆黒の炎を押し当てられる
「黒く染まれ」
冷酷な声と敵意をむき出しにしたクライヴの瞳は赤く光り、男の頭部を黒い炎で焼きつくす
「あがぁぁぁぁ!」
蹲りながらのたうち回る男は、両手を顔に当て、逃げていった
「何が起こってやがる?!」
「あれはクライヴの能力で幻覚を見せてるんだよ
あの黒い炎に触れた対象は、精神的に苦痛を味わって正気をなくす
まぁ、クライヴの力加減では度合いは変わるけどな」
