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IN DREAM2

第12章 炎の意志




砂を全身に纏わせながら、黄緑色に輝く宝石を頭部の中心に埋め込まれた小型のゴーレムは、井戸から這い上がるとすぐにアランの元へ駆け寄り、軽くお辞儀をする
その行為は造られたゴーレムが、作り手以外の味方の存在に敬意を示すよう、事前にプログラムされたもの
イリヤを含める土族は、ゴーレムを作る過程で最低限のマナーを埋め込ませて作ることができるのだ
技術をもった多種族がゴーレムを造る事はできるが、意志を持たせることもマナーをプログラムすることも出来ない
それを出来るのは土族だけである

精密に作り上げられ、かつ、ゴーレムが歩くだけで大地から石や土が歓喜するようにゴーレムにまとわりつく
磁力や小細工による現象ではなく、自然がゴーレム自体を迎え入れているのだ

「大地からの恵み・・あの女の子は本当に大地を司るインドリームなんだ!」
群衆の中からそういい放った火族の男の声に続き、次々とイリヤをインドリームと信じ、震え上がる者までいた

「まったく、さっきからそう言ってるじゃないの
・・で、イリヤは井戸でどうなってるのかしら?」
騒めく群衆に呆れながら、アランはゴーレムへ言葉を投げかけた
「ーーー報告。
この下、炎の妨害あり。
炎、歪んだ現象ーーーー。
大地の力、無効。
水の力、有効。」
機械音声によるゴーレムの報告は辿々しいが、アランにとってみれば十分な情報だった

「ゴーレムのおかげで、井戸の中に何があるのかわかったわ
アタシの予想もあたってたしね。
じゃあゴーレム、あなたに水の加護を授けるわ」
「御意」
「生命の根源たる水よ、我が声に応え、ゴーレムに加護を与えよ」

お辞儀をするゴーレムに対し、対面に立つアランは
右手のひらをゴーレムの頭部から肩までなぞるように触れる
触れた箇所からは水が浮き出し、ゴーレムの全身を包んでいった

纏っていた砂は湿気で消滅することなく、水と砂が入り混じりながらゴーレムに加護が加わる

「さて、これでアタシの声はイリヤにも聞こえるはずよ
どう?」

水の中で響く鈍い声は次第に鮮明になり、井戸底で炎を見つめていたイリヤへ届く

「あ、もしもしアランちゃん
声は聞こえるよ!」
「よし、じゃあその場所について説明したいから
少し離れて炎を見ててちょうだい」


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