第12章 炎の意志
「じゃあ、後で合図するから支持してね」
イリヤは両手両足に岩石を覆わせ、躊躇なく井戸の中へ飛び降りる
一定の高度から飛び降りると、人の体はバランスを崩し、頭から落ちる上に暗闇の中で一切の光がないため、恐怖がこみ上げる筈だ
だが、土のエレメンツを保有し、大地を司るイリヤであれば体と心に負担をかけることなく降り立つことができる
「あんなガキがインドリームとはな。」
「本当に俺たちの街に水を取り戻せるのか?」
「あんた達が只のペテン師なら、ここで殺してやるからな」
疑心暗鬼の火族はすぐにでもアランに攻撃を加えれるよう
剣を握りしめて睨んでいる
「今に見てなさい
すぐに解決してやるんだから」
イリヤの合図を待つアランは冷静に答え、火族の威圧など感じない程清々しかった
「ーーーここ、少しだけど砂があるってことは
どこからか入ってきて、穴がある・・そしてそれは外に繋がっているってことだよね」
井戸の底でイリヤは足元に広がる石畳ときめ細かな砂に触れる
「大地よ、道を印したまえ」
イリヤの声に反応し、輝く鉱石だけが大地より浮き上がり、道を記すように一列になって奥へ並んで行く
「えへへ、ありがとう」
イリヤは輝く鉱石に無邪気な笑顔を向け、薄暗い光を頼りに進む
その先は瓦礫の山になっており、すぐに道は途絶えていた
そしてその瓦礫の表面を覆うのは炎の壁であり、明らかに自然に出来たものではなかった
「この炎、燃料もなく燃えてる・・・
それに煙が殆どでてないってことは、誰かの能力で作られていて、この炎と瓦礫のせいで水が途絶えているんだ」
炎に手を近づけ、熱があることから幻術ではないことを確認し、イリヤは足元に転がる丸い石を拾い、握りしめて魔力を送り込む
「第三術式、自立型短期ゴーレム作成開始
微粒子を硬化させ、貯蓄可能な形態へ変化せよ」
イリヤは握りしめていた石をゆっくり地面に置く
その石は丸みを帯びた状態から人のように手足を生やし、自力で二足歩行する
石で作られた20センチほどの人型のゴーレムは声は発さないが、イリヤとその前に直面する炎の壁を見つめて立つ
「この状況をアランちゃんに伝えて。
この炎、きっとアランちゃんの水なら解消できるとおともうから。」
イリヤの命令を元にゴーレムは勢いよく壁を登り、井戸を出ようと動き出した
