第12章 炎の意志
カレッツァ街ーーーーー
その街に照りつける太陽から出る日光は、動植物が必要とする日の光を遥かに上回っており、十分すぎる熱を与えていた
行き過ぎた日光は、時に生命全てを枯らしてしまう程強力である
実際にカレッツァ街は連日の猛暑と水の恵みが無く、貯蓄していた地下水は一滴もなく、街に住む火族達はひどい渇きを感じていた
「・・思った以上に深刻ね」
干からびた井戸を覗き、アランを顎に手を当てながら考え込む
「本来地下水が枯れるなんてありえない
地表の熱が地下に影響される程浅い井戸でもないし、木の根が侵食してるわけでもないしね」
「アランちゃん、どうしようか?」
アランの隣に立ち、同じように井戸を覗いていたイリヤ
その周囲では鞘のない剣や短剣を持ち、群がる老若男女が立ち、アランとイリヤの様子を見ていた
カレッツァ街にたどり着いたインドリームはヒルトを宿で寝かし、ユリエフが付き添いで看病する中、二手に分かれて火族の情報を聞き出そうとしていた
アランとイリヤはカレッツァ街で深刻な問題視されている水不足の解決をする代償として、カレッツァ街で匿われているという医者を紹介してもらう手筈になっていた
医者の名はローラン・レイベルト
火族と風族の親から生まれた彼は、炎のエレメンツと風のエレメンツを持ち、生れながら炎の声というのが聞こえる体質であった
時を重ね、医者という夢を叶えたローランは、炎を操る能力に芽生え、戦闘民族で暗黒戦争時には闇族と手を組んだが故に
多種族と友好な関係を築けず孤立していた火族を救うため、盗賊や火族の傭兵が集うカレッツァ街に病院を設立している
数時間前ーーー
インドリームがカレッツァ街を訪れ、ローランが住む自宅兼病院へ訪れた時、そこにローランの姿は無かった
二手に分かれて情報を聞き出すしかなかったが、アランとイリヤは深刻化する水不足に予想以上であり、アランの力で只々水を出現させれば終われる話ではなかった
「地下から焦げ臭い香りがある・・
イリヤ、この井戸の中に入れる?」
「えぇ?!
いいけど、底で何すればいいの?」
「井戸底で水が流れていた痕跡を調べてほしいの。
痕跡が見つかってそこが行き止まりなら、岩石の塊を井戸に浮かせて合図してちょうだい
後はあたしがするから。」
「アランちゃん、この井戸の水の事で何かわかったの?」
「ええ、少しだけね」
