第12章 炎の意志
「この遺跡はかなり古くて不安定な構造になっている
だが、僕が長年探し求めていたのはここにあると思うんだ
さらに奥に進めば火の粉が沢山あるかもしれない
まだ原理はわかっていないが、この火の粉は自然と火族が作った遺跡があってこそ成り立つのだろう」
「ローランさん、回りくどいですよ
先に行きたいならさっさと行けばいいじゃないですか」
「・・いいかいアンリ?
僕は医者であり、君の体に焼き付けられた呪いを解くため探し求めていたものがやっと手に入りそうなんだ
この探索は君のためでもある。
それなのに、君をほって勝手に先には進めないよ」
「はぁー」
アンリは肩に置かれたローランの手を丁重におろし、深いため息をつき、深呼吸する
「元、医者ですよね?
ローランさんは〝あの死体〟を解剖してから全てが変わり、今は火族の歴史を探る考古学者に転職されたじゃないですか
今更、あたいの呪いの事なんて考えなくていいんですよ」
「そんな事はできない
僕は君に誓って約束した!
僕が考古学者になったのは、医者という立場だけでは君との約束を果たせないからだ。
考古学者になれば、多くの手がかりを自分の力で手に入れれる!」
「・・・そうですか
ローランさんが何を考えようと、あたいが為すべきことは変わらないです。
遺跡の奥には魔物や魔族が潜んでいる可能性がありますが、何が来ようと必ず守ってみせます」
「あっははは
アンリがいてくれて心強いよ」
ローランは優しい笑みを浮かべ、遺跡の更に奥へ進もうと足を前に出す
その足が地に着く寸前、アンリは風に乗って香る火薬の匂いに気付き、冷静な表情は瞬く間に消え去る
「ローラン先生!!」
「え」
ローランは力強く引っ張られ、進もうとした先の真逆へ吹き飛ばされる
そしてローランよりアンリは前へ踏み出し、壁になるように両手を広げて前から襲いかかるものから全身で庇った
その直後、膨大な爆風が遺跡の奥から吹き荒み、アンリとローランは遺跡の入口付近まで吹き飛ばされる
「っ!?」
「く!」
転がるローランを担ぎ上げ、アンリは直ぐに態勢を立て直し、両手に魔力をためあげて巨大な大剣を出現させる
赤茶色の布で巻かれたグリップは異様に長く、研ぎ澄まされた鉄の刃は横幅も縦幅も太く、巨大な槍のように持つ事で小柄なアンリでも悠々と操れる構造になっていた
「何者だ?!」
