第12章 炎の意志
「飛行船を起動させ、カレッツァ街へ向かいます
途中に魔族の襲撃があれば各個撃破し、ヒルト君を守り通してください」
「了解!」
ユリエフは両手に光の球体を作り出し、飛行船の動力源へ注ぎ、飛行船を砂漠からゆっくりと浮かせていく
それと同時にライセイは看板へ、イリヤは飛行船の後方、アランは左右へ掛け声をかけながら移動した
「ユリエフ」
一人だけ移動せず、寝室の壁にもたれていたクライヴはユリエフを呼び止める
「お前はカレッツァ街の事をどこまで知っている?」
「・・それは、どういう意味でしょうか
表の歴史上の話ですか?
それとも、あの街に滞在し続けている炎の能力者の事ですか?」
「ーーーやはり知っているんだな」
ユリエフはクライヴに優しく微笑み、寝室の扉を閉めて
仲間に声が聞こえないように話した
「インドリーム以外に自然を操れる能力者はいません
いたとしても、その魔力はインドリームとはまったく別ですので本物かどうか見抜けます。
ですが、カレッツァ街には以前からインドリームと同じ魔力を持つ能力者が滞在している・・
この情報を得たのは、私がインドリームとして地上に来る数ヶ月前でした」
「カレッツァ街へ向かうのは、火族が作る毒の解毒方法を
その能力者から聞き出すつもりからか」
「はい。
盗賊に聞くより確実かと思います」
冷静に淡々と話すユリエフから目を逸らし、毒に苦しみながら眠るヒルトに視線を移し、心の中で過ぎる疑念を口にだすクライヴ
「その能力者が何者かわからない段階で接触するのは大丈夫なのか?
全て火族の罠で、お前を殺すための布石かもしれない」
「・・そうだとしても、私は能力者の元に向かいます
ヒルト君を救える手がかりは、それしかないですから。
それに、インドリームと同じ・・いえ、ジェイク君と同じ魔力を持つ者が存在するのはおかしい事です。
天族として、調べておきたいことでもありますので。」
「・・・なぜそれを仲間に話さなかった?」
「余計に事態が混乱するからです
これ以上、不安や疑念を仲間同士持って欲しくないですから」
「それはお前が怖がっているだけだろ、ユリエフ」
「え」
クライヴの抑圧的な口調に、ユリエフの我に帰るように聞き返す