第11章 破滅の鐘
「はい、火族は戦略家であり、同時に傭兵として多くの戦をする一族です
彼等は炎の神アグニを崇拝し、その加護を得て炎のエレメントを持つ者こそ正当な火族とし、それに一つでも当てはまらない者は眷属として扱います」
人型であった光は分裂し、炎を崇める複数の崇拝者へ変わる
「眷属と呼ばれる者でも、炎の神を熱心に崇拝しその生贄を捧げる事で忠誠心を示す習わしもあります」
「生贄って・・殺すのか?」
「いいえ。
その生贄となった者は、火族の技術で記憶と肉体を全て改竄され、使命という呪いを植え付けられて生涯、駒として使役されます
それがチェスのプロモーションと似ている事から、そうなった者はポーンと呼ばれるのです」
崇拝者だった者の中から赤子が捧げられ、炎に包まれ
そして新たな人へ生まれ変わる瞬間を、ユリエフは光を使いながら説明していく
「眷属がポーンと呼ばれる存在になり、生まれながら異能の力を持っていても、炎のエレメントを持つ事はできません
なので貴方の弾丸には炎が宿っていない・・私を殺すつもりならまずは灼熱を浴びる弾丸でも用意しなければ、話になりませんよ、リリースさん」
再び魔導弓を構えるユリエフに、リリースは歯ぎしりをしながら銃口を向ける
「あたしの使命が呪いだって?
ふざけないでよっ!
知ったかのように話しやがって!」
拳銃、マシンガン、重火器を一気に操り、ユリエフとヒルトへ乱射していく
「ポーンの何が悪い!
あたし達のような眷属は、火族としての誇りを持っている!
破滅の鐘と呼ばれているあたしは、呪いなんかで動いてるんじゃない!
自分で納得して動いてるんだ!」
乱射する弾をユリエフは光の壁で、ヒルトは竜巻で流動を変えて防いでいく
「貴方が納得するようにも植え付ける事が出来るのですよ、リリースさん
あれは人一人の夢を剥ぎ取り、夢ではなく枷をつける一種の悪夢です・・貴方が赤子の時に捧げられたというならそれはーーーー
本当に可哀想としか言えません」
「その見下した言い方・・捨て切る眼差し・・それだからあたしはお前のような天族が気に入らないっ!!」
終わることのない銃撃に、ユリエフの光の壁に僅かな亀裂が生じる
「ユリエフ、リリースに植え付けられている呪いが悪夢と同じなら、インドリームの力で潰せるんじゃないか?」
「それはっ・・可能性としてはゼロではありません」
