第11章 破滅の鐘
「隙をつかれるところでした
ありがとうございます、ヒルト君」
「大丈夫だ、ユリエフ
協力し合えば絶対に勝てる」
冷静に対応するヒルトは大剣の矛先をリリースへ向ける
「さっき、お前は使命を全うする事が大切だと言ったよな」
「それが、なに?」
「俺を追い詰め、ユリエフを殺そうとすることがお前の使命なのか?」
「はっ、そんなちっさい事があたしの使命なんて思われるとは
心外だよ」
鼻で失笑するリリース
「あたしは再び世界に戦火を撒くこと。
かつて、火族が世界で一番輝き繁栄時期だったあの瞬間を取り戻す
そのための贄を捧げるのが使命なんだよ」
「世界に戦火?
繁栄時期?
まさか、暗黒戦争を再び起こそうっていうてるのか?!」
「その通り。
今の世界に足りてないのは、闘争に燃える炎。
我々火族はその火を起こすためなら何だってするの。
こうやってーーー」
「!」
リリースの話の途中でヒルトはある事に気がつく
それはユリエフの背後へ回っていた一丁の弾丸
「炎を消そうとする邪魔者を排除する!」
拳銃の中になくとも弾丸は目で追えないスピードで襲いかかり、ユリエフの左手を擦る
赤い血が袖から滲み出し、痛みと痺れに襲われるがユリエフはリリースに敵意を強めることはなく、静かに治療する
「ユリエフ、大丈夫か?!」
「御心配なく。
これくらい、何ともありません」
瞬く間に傷を癒し、穴が空いた服自体も再生させていくユリエフは
冷静な反応で応え、そして肩をすくめる
「リリースさん、貴方と戦ってわかりました。」
「はぁ?
何がわかったっていうのよ。
銃弾をよけてばっかりのくせに!」
「・・・貴方は純粋な火族ではなく
火族の眷属となった異国の民の"ポーン"、ですね?」
「なっ」
ユリエフの問いに、リリースは後退りをしながら身構え、その表情は焦りと恐怖が混ざる
「ポーン?
何だよそれ・・」
ユリエフは癒した左手から光の球体を作り出し、片手に収まる程の人型へ変え、ヒルトの目の前に浮かせる
「ヒルト君、チェスはご存知ですか?」
「え、知ってるけど」
「ルール上、本来前にしか進めず、斜めの敵しか潰さない駒のポーンが相手型の最奥の陣地に突入した時、そのポーンは好きな駒に変える事が出来るプロモーションという技があります」
「確かにあるよな
けどそれがどういう繋がりになるんだ?」
